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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

ノーベル賞受賞者は“孤高の研究者”ではない
日本が学ぶべき「チームを生かす達人」だ!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第4回】 2014年10月20日
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子どもの頃にもっと異文化体験が
できるような環境づくりを

 クリエイティビティやイマジネーションを育てるのに大切なのは、子どもの頃のボランティアや遊びなどの経験です。日本の子どもたちが受験戦争に突入する頃、米国の子どもたちは異文化体験に取り組むのが一般的です。

 たとえば、夏休みにどこかの企業でインターンをしたり、ボランティアをしたり、ボーイスカウトに入ったりして、自分の価値観とは別の価値観に触れる機会を増やし、学校では学べない知識をたくさん身につけます。子どもの頃から、異質な人とコミュニケーションをとるトレーニングを重ね、チームづくりを学んでいます。チームのメンバーとして、あるいはリーダーとして力を発揮できるかどうかが教育の基本となっているのです。

 日本でも、子どもの頃にもっと異文化体験ができるような環境づくりが必要ではないでしょうか。

 また、米国の大学ではSAT(大学進学適正試験)の点数だけでは合否を決めません。「どれだけ社会貢献してきたか」という自分の経験に基づいたエッセイも評価基準になります。

 ですから、米国の高校生たちは、高校生活の4年間に社会貢献を数多く体験します。「クリスマスにホームレスの人に食べ物を渡すボランティアをした」「東南アジアで家づくりのボランティアに参加した」などなど。

 私の通っていたダミアン高校では、在学中のボランティア活動が100時間に満たないと卒業できないというルールがありました。

 テストの点数だけで評価していると、どうしても似たような発想をもつ学生ばかりが集まってしまいます。これでは大学に活気が生まれないので、こうした経験を評価する仕組みを取り入れ、多様な経験をもつ人が集まるように工夫しているわけです。

「才能」を引き伸ばす
システムも大切

 一方、米国ではどの高校でも「サイエンスフェア」を毎年開催しています。こうした場で優秀な研究を発表すると、全米大会に参加する道が開けます。

 コンテストは「未来のノーベル賞候補」を育成する目的で1942年から行われています。実際に2013年までに8人のノーベル賞受賞者を輩出しています。

 たとえば、2012年の優勝者は乳がんの検知をもっと簡単にする方式を論文に発表し、10万ドルの奨学金を手に入れました。数学オタクだった私にとってコンテストの優勝者は憧れの的だったように、子どもたちのテクノロジー分野への関心を高める効果もあります。

 このように米国には「才能」を引き伸ばすシステムがあります。実力がある高校生は、その能力が認められ、さらにそれを高めていけるシステムが導入されているわけです。

 日本でも、優秀な高校生たちがさらに個性を伸ばせるようなシステムやチャンスを積極的につくっていくことが大切です。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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