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山崎元のマネー経済の歩き方

新しいバブルづくりのレシピ

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第40回】 2008年7月8日
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 思うに、バブルの発生と崩壊は金融の新商品・新技術によって起こっている。1980年代の日本株バブルは、当時としては新しい商品であった特定金銭信託やファンド・トラストによる、事業会社の資金まで巻き込んだ「財テク」ブームの下で生じた。「握り」という利回り保証の慣行が投資の本当のリスクを誤認させた効果も大きかったが、いったん勢いがつくとなかなか止まらないものであることが、今でも記憶によみがえる。

 その後のバブルや金融危機にも、背後に新しい金融技術の登場があった。ブラックマンデーやLTCMの崩壊に至った金融危機については、リチャード・ブックステーバー著『市場リスク 暴落は必然か』(日経BP社)に詳しいが、両者共に金融技術の進歩が関与しており、前者にはポートフォリオ・インシュランス、後者の背景にはアービトラージ取引やヘッジファンドといった舞台装置があった。サブプライム問題の前提には、不動産担保ローンの証券化ビジネスがあって、複雑な証券化商品がリスクを、一時的に、巧みに隠し、アメリカの不動産バブルをあおった。ナスダック指数の暴騰・暴落がまだ記憶に新しいネット・バブルはやや毛色が違うが、ネット企業の株式という価値評価があいまいなものを対象にして、IPO(株式新規公開)は儲かるという神話をつくったことが大きかった。

 現在の商品価格高騰もバブルだろう。商品(指数)連動ファンドのような仕掛けが、長期運用資金を商品市場に引っ張り込んだ。

 いずれのバブルも、金融の緩和状態が前提条件として必要なのだが、金融的に目新しい技術や商品で目先を変えながら、世の中がこれに適応するまでのあいだに金融業者がひと稼ぎするというプロセスが原動力になっている。

 バブルづくりをけしかけてはいけないが、手順はそろそろパターン化されつつある。(1)対象物を金融商品化して取引市場をつくる、(2)同類の金融商品に関してインデックス(指数)をつくる、(3)インデックスに関して先物・オプションなどの派生商品をつくり市場化する、(4)指数連動ファンドをつくり資金を導入しバブルに導く。

 いまや、景気維持のための金融緩和は常態化しているし、世界的に過剰な貯蓄が投資資金として存在する(要はアメリカの赤字の裏返しだが)。対象さえ見つけたら、新しいバブル・ビジネスをつくることは比較的容易だろう。次のバブル候補は何だろうか。

 一つの有力候補は排出権取引だろう。これは、次代のバブル・スターたちがすでに仕事にかかっている段階なのかもしれない。

 もう一つの有力候補はコンテンツの著作権だろうか。「鉄腕アトム」「冬のソナタ」といった既存の作品もいいし、場合によっては、「SMAPの著作権が生むキャッシュフロー」といった現在進行形のビジネスも証券化できよう。タレントであれば、事務所が管理しているので事務所の株式を公開すればすむ話かもしれないが、個々のタレントやコンテンツごとに切り分けて権利を証券化したり、あるいは会社化したりして株式をIPOすると、権利の売り手は、投資家が考える将来の夢のぶんの価値まで含めて現在形で資金を手に入れることができる。

 流通市場までつくることができれば、たとえば「クリエイティブ資本インデックス」のようなものをつくって、その派生商品や連動ファンドで稼ぐのは、金融マンには通いなれた道というべきだろう。

 腕と強欲に自信のある若手金融マンはチャレンジしてみないか。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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