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DNA鑑定でわかった切り裂きジャックの正体
120年の時を経て、ミステリーが解決される!?

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第89回】 2014年10月18日
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 切り裂きジャックと呼ばれた殺人鬼が次々と五人の女性を殺害したのは、いまから約一二〇年前――、一八八八年のことだ。

 五件の犯行は八月三一日から一一月九日までの短期間に起きたが、その殺害方法がきわめて残忍、猟奇的なことから、犯人は“切り裂きジャック”と呼ばれた。呼び名のとおり、ジャックは女性たちの喉笛を切って殺害すると、その死体を切り刻み、子宮など臓器の一部を持ち去ったりしたからだ。

 被害者の女性たちは、いずれも娼婦だった。

 これから書く事件のあらましについて、お食事中の方、もしくはグロテスクなお話が苦手な方はページを閉じることをお勧めします。

 事件がいかに猟奇的だったかというと――、たとえば、二人目の犠牲者となったアニーは腸が引き出され、右肩にかかっていた。三人目の犠牲者キャサリンは顔面をギザギザに切られ、臓器の一部を持ち去られていた。最後の犠牲者メアリーに至っては、正視できないほどに全身を切り刻まれていた。

 当時の捜査記録や霊安室に安置された彼女たちの写真が資料として残っているのだけど、メアリーは全身滅多刺しのうえ鼻を削ぎ落とされ、くちびるや額も剥がれていたため、顔からの身元確認ができないほどだったそうだ。

 さらに、ジャックはメアリーの皮膚を剥ぎ、両方の乳房を切り取り、胃腸、脾臓、腎臓と心臓を摘出した。臓器は投げ出されるように現場に放置されていたが、何故か心臓だけは見つからなかったらしい。犯行現場はメアリーの部屋で、彼女が横たわったベッドには血溜まりができ、壁には血飛沫のあとが残っていた。

 という凄惨な事件は、容疑者が何人も浮上したのに、犯人の特定には至らなかった。つまり、ジャックは捕まらなかったのである。だから、切り裂きジャックは誰だったのか――、は一二〇年続いたミステリーだった。

 もともと謎の多い事件でもあった。被害者はいずれも娼婦だったことや、犯行現場がホワイトチャペルといって……、モノポリーというゲームをご存じなら、スタートから二番目に出てくる地域だが、かつては貧民街だった一帯に集中していること、猟奇的な事件だったにもかかわらず二ヵ月少しで事件が終わっていること、あれだけのことをやっておきながら被害者が五人だったこと――、等々だ。

 言うなれば、切り裂きジャックは忽然と表れ、忽然と消えているのだ。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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