(2)変化は雪崩のように簡単に起きる
5%を目指して変革を続けること

 巨大企業や多数の人間が集まる組織において、誰か一人が戦略変更の重要性に気付いても、組織自体を変えることは不可能ではないかと感じるものです。個人に比較して、組織は巨大な存在であり、惰性で動く人たちは苦い水を飲む必要がある変化を望まないものです。「変わる必要性はわかっている、でも組織は大きすぎて変えられない」のだと。

 私たちは、組織が変化することを「過半数を占めること」だと考えがちです。例えば100名の組織であれば、積極的な戦略を支持する人が51名にならないと組織は変わらないのだと思い込んでいるのです。

 ところが自然科学などの研究では、それよりはるかに低い比率の変化が導入されることで、集団全体にポジティブな影響を与えることが指摘されています。よい影響、よい成果のフィードバックは周囲に波及していくものだからです。

 ソーシャル・イノベーションをテーマにした書籍『誰が世界を変えるのか』では、特定のコミュニティがたった5%の人たちのポジティブな影響で、その進路を大きく変えていく事例を解説しています。100名の集団の変化は、新しい変化を支持する人が51名になるまで始まらないのではなく、5名を超えた時点で始まり加速度的に進展していくものなのです。

 変化を導く人にリーダーシップがあればさらにこのスピードは加速します。企業変革を成し遂げたリーダー、優れた経営者は極めて少人数の変革チームで巨大組織を激変させている例は、社会に溢れているからです。

 巨大組織を変えるのに、51%という過半数が必要であるというのは間違った幻想であり、この記事を読んでいる読者の皆さんの行動が変わるだけでも、ある程度以上の規模の組織にさえ、変化の好循環を生み出すことが実際には可能なのです。