権威は信じない

「もっと速く読みたい」と思い、授業が終わるとすぐに先生を追いかけて読書速度を上げる方法を尋ねると、次のように言われたという。

「読書速度を上げる方法はない。IQや大人になったときの身長、瞳の色などと同じように、読書速度は生まれつきのもので、原則として変えることはできない」。

 13歳のときから体を鍛え始めていたトニー・ブザンは「そんなはずはない」と思った。「適切な筋トレを行えば数週間で筋肉がつき始めるのだから、読書速度も鍛えれば速まるに違いない」。

 そこで、彼は脳と目の働きを研究し、訓練を開始した。その結果、読書速度はまもなく1分当たり400語を超え、最終的には楽に同1000語以上を読むことができるようになった。しかも、スピードだけでなく、読解力、理解力、記憶力も向上した。

 この体験から、トニー・ブザンは「権威のある人の言うことが正しいとは限らない」ことを学んだ。その後大学で心理学を専攻したが、探し求めていた「脳の取説」に出会うことはなく、独自に研究と実践を重ねた。その成果が感じられた大学4年のとき、彼は家庭教師として活動を開始し、「頭の悪い子」「できない子」というレッテルを貼られている生徒たちの本来の「脳力」を引き出すことに取り組んだ。この経験は大きな学びとなった。