楽天とTBSの争いに終止符が打たれそうだ。

 TBS株式を買い進めていた楽天は、2005年に共同持ち株会社化を申し入れた。現在でもTBS株式の19.83%を所有しているが、TBSは提案に頑として応じず膠着状態が続いてきた。

 しかし、楽天にとって思いもよらない法改正で事態は急変する。

 08年4月の放送法改正で、テレビ局は認定放送持ち株会社への移行が可能となったのだ。移行後はあらゆる株主の議決権が33%以下に制限されてしまう。

 TBSは09年4月の移行を発表、実現すれば楽天はTBSの経営を掌握できなくなる。移行には12月16日の臨時株主総会での議決が必要だが、TBSの多数派工作は終わっている模様。楽天の苦労は水泡に帰すこととなった。

 それどころかこの株安で楽天に追い打ちをかけるのが、株式の評価損だ。

 楽天はTBS株の取得に約1170億円を投下してきた。しかし、12月9日現在の株価(1251円)で換算すると、価値は472億円に減じ、評価損は約700億円にもなる。前期の水準(純利益・約368億円)から判断すれば、赤字転落の可能性もある。

 それでも、長い目で見れば、楽天が敗者、TBSは勝者と断じることはできないかもしれない。

 TBSは放送の5倍の利益を不動産から得ており、「報道のTBSから、不動産のTBSへ」などと揶揄される始末。広告減などから、今後も大幅な増収は難しい。

 一方の楽天は評価損の計上を迫られる可能性があるものの、本業は絶好調。また、認定放送持ち株会社への移行が決定した場合、楽天には4月1日時点での時価か、交渉による価格でのTBSへの買い取り請求権が発生するため、行使すれば数百億円が手に入る。

 現金も730億円(08年第3四半期末)と豊富にあるため、早々にTBSを見限り、新たな投資に舵を切る可能性もある。

 事実、三木谷浩史会長は最近、「景気回復後にテレビに広告が戻るか疑問。今後はネットの動画配信に広告がシフトしていく」とテレビ局を見限るような発言をし、変化をにおわせている。

 テレビ朝日買収に失敗した後に経営者としてひと皮むけた孫正義・ソフトバンク社長という先例もある。三木谷会長にとっては、高かったが貴重な授業料になるかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)