「女の子を愛せない」
男の子が求めたもの

池田さんとフランクな会話をしながら「チェンジ」していく。緊張しているお客様の心を解きほぐしていくのも重要だという

 まずは、服を着替え、それからメイクに移る。流れるように進む「仕事(いわゆる変身メイク)」を見守りながら、私たちはこの「チェンジスト」の正体にことさら興味を持った。昼のバラエティ番組『バイキング』(フジテレビ系/毎週月~金)にも出演した腕前はかなりのものらしい。最近では、モデルボクサー・高野人母美をアバター(映画「アバター」中の全身青塗りのキャラクター)に変身させ、新聞報道もされていた。

「もともと、私は横浜にあるヘアサロンの美容師だったんです。でも、なぜか、私を指名するお客さんは変わったヘアスタイルを求める人が多くて、日常の仕事をしていくうちに、お客さまを『変身』させる喜びを見出したんです。世の中には『変身』を求めている人がたくさんいる事実も知り、だったらフリーになって、その道を究めようと……」

上半身だけではなく、全身が映り込む大きな鏡で、メイクの様子を確認できる。「着替え」をした後で「チェンジ」していく

 しかし、髪をスタイリングする仕事(美容師)と、顔を創り替える仕事(へアイメイク)は似て非なるものだ。

 他者をチェンジさせる能力は生まれ持っての才能なのか? それとも、どこかの学校で習得したものなのか?

「私の場合は全部独学です。もちろん、プロとして仕事に向き合っていますが、お客様が私のところに来なくても自分で『チェンジ』できるよう、使っているメイクアイテムもどこにでも売っているものばかりです」

 その言葉を証明するように、池田さんはドラッグストアにある医療用テープを編集長の目尻からおでこにかけて貼り付け、顔全体を吊り上げた。目元のたるみや皺を消すテクニックだった。

誰の、どんな「チェンジ」に置いても、目元の処理にいちばん時間をかける。プロの仕事が存分に発揮されるパートだ

「チェンジ」中の編集長は、マッサージでも受けているように、気持ちの良さそうな表情で目をつむっている。

「『自分がイケメン過ぎて女の子を愛せない』という男の子が来たことがあります。そんな深い悩みを聞きながら、私が彼をチェンジさせていき、いざ出来上がった自分の顔を彼自身が見て、逆に女性の美しさに気づき、それで女の子を好きになれるようになったんです」