エボラ出血熱が世界中で猛威を振るっている中、日本では厚労省が水際対策の充実や治療効果のある未承認薬の2万人分備蓄などを喧伝しています。しかし、本当に政府の対応は万全と言えるのでしょうか。制度の詳細を見ると、特に国内対策ではかなり不安が大きいことが分かります。その原因は、歪んだ地方分権の実態です。

水際対策で起きる“縦割り”という障害

 エボラ出血熱のような感染症の日本国内での発症や蔓延を防ぐ対策は、日本に入ってくるのを防ぐ「水際対策」と、国内で感染が確認された場合の対応である「国内対策」に分けられます。

 前者の水際対策については、検疫法を根拠に国が対応をすることとなります。感染の疑いのあった帰国者がすぐに病院に搬送されるなど、報道では完璧かつスムーズに対応できていることが強調されていますが、実際は政府の省庁間の縦割りが弊害をもたらしています。

 水際対策については、厚労省(検疫所)が入国者の体温を測定し、法務省(入国管理局)がエボラ出血熱の流行している国への滞在を確認し、国交省(空港事務所)が発熱などの自己申告を促すポスターの掲示を担当し、検疫所が関係省庁に協力要請をするとなっています。

 しかし、実際は、感染の疑いのあった帰国者への対応の際も、厚労省から国交省への具体的な要請はなかったとのことですし、そもそも機内で乗客が嘔吐した場合の対応は“検疫マター”として検疫所任せになっているようです。水際対策については、省庁間の縦割りが弊害となって適切かつ十分な対応が取れない可能性があるのです。

手続きが官僚的、病床数はわずか92
国内対策での問題点

 しかし、それ以上に問題が多いのは後者の国内対策です。国内対策の根拠法は感染症法、対応する主体も国ではなく地方自治体となりますが、その実態を見ると、水際対策以上に脆弱です。