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アダルトビデオ撮影歴のある保養施設はNG!?
区議の提訴に、温泉旅館を購入した渋谷区が困惑

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第91回】 2014年10月31日
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 今春、渋谷区は新たな保養施設として、静岡県河津町の温泉旅館を購入した。

 渋谷区は箱根町にも保養施設を所有しているが、こちらは人気で予約を取りにくいこともあっての買い入れだったとのことだ。

 区の経理課が発表したところでは、温泉旅館は「菊水館」と言い、経営難から今年三月いっぱいをもって休業していたのだそうだ。区はこちらの経営者から泣きつかれ……、もとい、打診され視察等を経て購入するに至ったのだが、敷地面積は約三三〇〇平方メートルで、地下一階・地上五階建てからなる宿泊棟の他、温水プールと体育館がある。

 客室数は二十六部屋で、収容客数は一一二人。渋谷区は、購入や改修、秋以降の運営費等々で二億二八〇〇万円の事業費を計上した(買い取り価格は一億一〇〇〇万円)。

 もともと渋谷区と河津町とは縁があって、十年前に災害時の相互応援協定を結んだ間柄なのだそうだ。年に約二十回、渋谷区のシニアクラブが一泊二日のバスツアーで河津町を訪れてもいる。その数は年間で六、七〇〇人にのぼるらしい。宿泊費などを少しは安くしているのかもしれない。

 そうしたつきあいを経ての、今回の買い取りだったようだ。

 「町外の大手資本に(菊水館の土地や施設を)買い取られれば、地元の雇用や商売への影響が心配。渋谷区の施設になるのはありがたく、さらに交流が進むよう期待したい」

 河津町の相馬宏行町長は、渋谷区の買い取りをこのように歓迎している。

 つまりはこういうことだ。河津町は渋谷区とつきあいもあって素性の知れてるから安心なの。たとえ大手が新規参入を図っても、どこの馬の骨とも知れない連中には売りたくなかったんだ――、ってことを町長さんは言いたかったんだね。

 なんだか、地元からは「地盤・看板・カバン」のある後継者に政治家になってもらいたいって発想ととてもよく似ているね。地方分権がなかなか進まないのは、こーいうところにも原因があるような気がする。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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