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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

局所的な「危機対応」では不十分
複数のトラブルが同時に起きる事態に備えよ

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第5回】 2014年11月10日
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危機対応がビジネスに
新たな価値をもたらすことも

 この教訓から学ぶべきなのは、2000年問題のように、複数のトラブルが同時に起こるような事態を想定して対策を考えておくことが非常に重要だということです。

 とくに日本は、地震、津波、噴火、台風などさまざまな天災が頻発する国であり、加えて鳥インフルエンザ、口蹄疫、SARSなど、中国やアジアを含む伝染病のリスクもあります。何か単独で対応策を考えていても、事件が重なればたちまち身動きがとれなくなります。

 起こらないかもしれないリスクに備えるなんて、ムダな投資と考える人もいるでしょう。しかし視点を変えれば、危機対応のための方策は、別の価値づくりにも役立てることが可能なのです。会社や社員を守るだけでなく、企業の競争力も高める――これからの時代、そんな発想力が求められます。

 また、米国の大手製薬会社は、過去に大きな災害に遭い、社員の安否確認に手間取った反省から、社長が何十億円もかけて「危機管理センター」を作ることを決意しました。役員会では「いつ起こるか分からない事態に備えて、なぜこれほどのコストをかけるのか」と大反対されましたが、社長の決断は揺るぎませんでした。

 そして、危機管理センターが実際に稼働してみると、社員の安否確認システムがビジネスにも活用できることが分かったのです。

 以前は顧客から「すぐに来てほしい」という依頼があると、必ず本社から社員が出かけていました。でも、このシステムで社員が今、世界各国のどこにいるかがリアルタイムでわかるようになったおかげで、近くにいる社員を急行させることできるようになったのです。

 結果、社員間のグローバルなコミュニケーションが大きく改善したうえ、業務効率や顧客満足度も大きく向上。危機管理センターへの投資コストは3年半でペイできたそうです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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