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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

局所的な「危機対応」では不十分
複数のトラブルが同時に起きる事態に備えよ

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第5回】 2014年11月10日
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サイバーセキュリティ対策も
全体を俯瞰する視点が重要

 サイバーセキュリティ対策にも、同じことがいえます。

 強固に見えるセキュリティ機能にも必ず突破する方法はあり、ハッカーの侵入を防ぐ完璧な防御策は、残念ながらありません。セキュリティに関していえば、世界にはハック(不正侵入)されていることに気づいている企業と、気づいていない企業の2種類しかないというのが、私の考えです。企業経営者はそのことを踏まえ、組織全体としてセイバーセキュリティを構築する必要があるのです。

 今こそ、硬直化した組織やサービスに横串を刺し、ゼロベースで設計し直すチャンスととらえるべきです。ムダや不便を取り除き、効率的かつ便利に改善しようとする努力は、ハッカーがつけいる隙を限りなく狭める対策となるでしょう。

 セキュリティ対策という狭い枠組みで考えるのではなく、ビジネス全体を俯瞰する視点も重要です。サイバーセキュリティを面倒でつまらないもの、またコストのムダと考えるのは大きな間違いです。サイバーセキュリティ戦略とビジネス戦略をうまく融合させるべきです。

 たとえば、「IoT(Internet of Things=モノのインターネット)」時代ということで、空調機や冷蔵庫などの家電もインターネットと接続されるようになっていますが、セキュリティが追いついていません。

 今後は、設計段階から使用時のセキュリティについて検討し、製品やサービスにセキュリティ機能を組み込んでいくことが必要です。これからの時代、セキュリティの高い製品やサービス、企業を選ぶユーザーが増えていくことでしょう。

 現状、日本のサイバーセキュリティは米国などに比べて遅れています。ただ、それだけにこの分野で誰も想像していないイノベーションを起こし、海外に輸出できるグローバルな産業に育てられる可能性も秘めているのです。成長戦略の中にいかにセキュリティ戦略を取り入れていけるかがカギになるでしょう。

 では具体的にどんな方法があるのか。次回はそのあたりについて、詳しくお話しすることにしましょう。

(構成/河合起季)

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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