これまで医療や介護の問題を労働力の観点から見てきたが、以下では費用負担の点から見ることとしよう。ここで問題となるのは、高齢者医療費の比率が大きく、伸び率も高いことだ。この問題は、自己負担率と密接に関係している。

日本の医療保険制度の概要

 医療費の総額については、この連載の第16回で述べた。2012年度の国民医療費は39.2兆円で、GDPに対する比率は8.3%だ。年間伸び率はGDP伸び率より高いので、GDPに対する比率は今後上昇する(その1つの推計は第16回で示した)。

高齢者医療費の激増は、<br />低すぎる自己負担率が原因?

 では、医療費の負担はどうなっているのだろうか?

 財源の内訳を見ると、図表1に示すとおりである。公費が15.1兆円で38.6%(うち、国庫が10.1兆円で25.8%、地方が5兆円で12.8%)、保険料が19.1兆円で48.8%、患者負担が4.7兆円で11.9%となっている。

 日本の医療保険の概要は、図表2(次ページ)に示すとおりだ。大別すると、サラリーマンが加入する被用者保険(職域保険)と、自営業者・サラリーマン退職者などが加入する国民健康保険(地域保険)、そして、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度になる。日本国民は、必ずどこかの医療保険に加入している。

 被用者保険は職業によっていくつかの種類があり、企業のサラリーマンが加入する健保組合と協会けんぽ、公務員が加入する共済組合などに分かれている。

 自己負担率は、70歳未満が3割(義務教育就学前は2割)、70~74歳が2割、75歳以上が1割となっている。