週刊ダイヤモンド 世界同時不況が、日本の電機メーカーを直撃しています。2009年3月期には、主要9社合計の最終赤字が2兆円近くに達する非常事態となる見通しです。

 つい1年前まで過去最高益を更新し、「この世の春」を謳歌していたはずの電機メーカーに、いったい何が起きたのでしょうか。

 その最大の要因は、需要の激減と製品価格の急落です。本特集のなかで「デジタル家電価格下落の実態」として、本誌独自の価格調査をまとめましたが、薄型テレビやデジタルカメラ、PCなどのデジタル家電が軒並み1年足らずの間に半値近くまで値下がりしています。

 今なら、32インチの液晶テレビが6万円台で購入できるのです。ご存知でしたか?

 価格急落をもたらしたのは、言うまでもなく需要の激減です。9月のリーマンショックで急失速した薄型テレビ市場では、在庫が一気に積み上がり、本来かき入れ時であるはずの年末商戦は、赤字覚悟の「在庫投げ売り合戦」となりました。

 デジタル家電メーカーの不振は、当然その上流である半導体メーカーにも及んでいます。DRAM(読み書きが自由な記憶素子)で世界5位の独キマンダが破綻し、同3位のエルピーダ・メモリは台湾メーカーとの統合に向けて動き出しました。

 本特集の緊急独占インタビューで、同社の坂本幸雄社長は、公的資金を一般企業に注入する政府の新制度について、「可能性があるのなら選択肢として考える」として、危機を乗り切るためにあらゆる手段を尽くす覚悟です。

 ただ、見落としてはならないのは、「電機各社が巨額の赤字に陥った背景には、市場環境の激変といった外的要因に加えて、抜本的な構造改革を先送りして来たという内的要因もある」ということです。

 特集では、「買収なき提携、選択なき集中」という切り口で、事業の選択と集中を断行できない日本の電機メーカーの問題点を浮き彫りにしました。

 本特集の緊急独占インタビューで、パナソニックの大坪文雄社長は、「モノ作りの基本は愚直に夢を追うことであり、何をさしおいても、企業の競争力の源泉は人である」と言い切りました。

 未曾有の危機を乗り切るためには、痛みを伴う構造改革は避けては通れません。しかし、ビジョンなきリストラからは何も生まれません。大坪社長の言葉には、人員削減に踏み切らざるを得ない苦悩と、「それでもなおやり遂げるべきことがある」という経営者の強い決意が伝わって来ます。

 果たして、日本の電機メーカーはこの危機を乗り切ることができるのでしょうか。詳細なデータと、経営者や現場への徹底した取材に基づく多角的な分析にご期待ください。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛)