長い目で見てプラスマイナスは?

 雑誌や新聞などで、「マイホーム取得、今がチャンス」といった特集記事がよく組まれる。物件価格が底値、ローンの金利が最低、大型の住宅取得控除がついたなど、至極もっともな理由が挙がっているので、つい「このタイミングを逃しちゃいけない」という気持ちになる人も多いのではないだろうか。

 ところが、長い目で見るとタイミングによる損得ってそれほどないのである。特に買い替えでは、不動産価格の上昇期は売値も高いが、買値も高い。逆に下落しているときは売値も安い代わりに買値も安い。

 また、物件価格が上昇するときは景気も上向き。多少物件価格が高くても、給料も上がるから返済もラクになる。逆に、不動産価格が下落するときは世の中も不景気で給料やボーナスも渋いから、ローンの組み方に注意しなければならない。その代わり、金利は低金利。景気刺激策として、住宅取得を後押しする政策も打たれる。結局のところ、プラスマイナスゼロなのだ。

 つまり、「マイホームは、欲しいときが買いどき」なのだ。不動産市場のサイクルを読むのも無駄ではないが、それ以上に大切なのは自分たちのライフステージや人生設計に照らし合わせたタイミング。それが感覚的にわかるのが女性だ。妻が「ほしい!」と言ったときこそ、夫婦げんかをせずにマイホームを取得するチャンスである。

キャンセル住戸を値引き交渉

 吉沢慶太さん(仮名、38歳)は、昨年、妻の利香子さんにせっつかれてマイホームを取得した。「日本の景気の行く末も見えないこんな時期に、大きな買い物はしたくない」としぶったが、利香子さんは「今でなけりゃ、絶対ダメよ」と一歩も引かない。すでに候補物件も探し当てていたのである。

 利香子さんが狙ったのは、評判のいい私立中学から徒歩圏で、近くには幼稚園も複数ある新築マンション。吉沢家では長男の中学受験と長女の幼稚園入園を控えていた。この物件は大規模開発の第3期で、1期、2期は高い倍率で完売した。その後、景気後退を受けてディベロッパーは3期の販売物件は価格を下げた。それにもかかわらず、ローンの不調でキャンセル住戸がかなり出てしまったことから、担当者は内々に値引きに応じることをほのめかしていた。