セルビア人を「最大の加害者」に
仕立て上げる偏向報道

 署名記事は一三五人のライター、特派員、記者によって書かれていたが、うちセルビア人はわずか九人、クロアチア人とムスリム人は各二人、そして非ユーゴスラビア人が何と一二二人にのぼった。内戦の初期は、言葉も話せず地域の歴史も知らない新米の記者たちに頼らなければならなかったため、偏った記事やきわめて基本的なミスが起きた。これらの一三五人以外にも、特派員や欧米支社の編集者が執筆ないし編集した無署名の記事がたくさんあった。

 日付、発信地、内容分析から、クロアチア人やムスリム人の視点、心情、被害に関するものが圧倒的に優勢であることがわかった。サラエボをはじめとするボスニア発の何百もの記事では、偏見や偏った見方が顕著だった。一方、セルビア人やセルビア関連の追跡記事、意見、分析、論説などは否定的に、あるいは軽く扱われていることもわかった。

 その後、配信記事や特集、論説記事など四〇〇〇本の戦争報道を日付、情報源、編集の視点などから分析した結果、最低でも四〇対一の割合で反セルビアの傾向が見られた。西側テレビのジャーナリストたちの報道やコメントは、さらに偏った割合を示した。(100~101ページ)

 そうした報道に共通していたのは、セルビア人を民族浄化や大量虐殺、組織的レイプ、大量虐殺を含む「戦争犯罪」における最大の加害者として描いていた点です。ブロックはまた、93年のピュリッツァー賞共同受賞の対象となった複数の記事を分析し、「捏造」が疑われた2人のジャーナリストに「事実」を突き付けようと何度も接触を試みました。しかし2人ともブロックから逃げ回り、決して回答しようとはしませんでした。あるいは、ようやく本人をつかまえても、自分の記事についてコメントすることを拒んだのです。

 本書に列挙されたメディアによる事実歪曲の事例には、ニューヨーク・タイムズの著名ジャーナリストであるロジャー・コーエンやコラムニストのウィリアム・サフィア、アンソニー・ルイスらも含まれています。ABCのキャスターをつとめた故ピーター・ジェニングスやナショナル・パブリック・ラジオのトム・ジェルテン、CNNのクリスティアン・アマンプール、クリスチャン・サイエンス・モニターのデービッド・ロード、そしてワシントン・ポストのメアリ・バッティアータについても告発し、AP通信やロイターも槍玉に挙げています。