オールドエコノミー的なイメージが強い農業機械・小型建設機械市場。その大手、クボタは1315億円の営業利益のうち7割を海外で稼ぐグローバル成長企業だ。モノはいいが海外で売れない日本メーカーが多いなか、ブランド構築と販売力、マーケティング力で優位に立つクボタの海外戦略の強さと課題に迫った。

 クボタで海外事業を統括する林守也副社長は、日米両国での自社のイメージの違いを悔しがる。

「米国では、『クール!(かっこいい)』とスーパーマーケットのレジで、クボタの作業着を着ていた社員が声をかけられたほど」(林副社長)。かたや日本では農業や土木関係者には知名度があるが、一般にはアスベスト問題で負のイメージが先にきがち。国内農家数も公共事業も減少の一途で、「成長」「グローバル」といったイメージから遠くなりがちだからだ。

 しかし、実態は違う。2000年度は20%以下だったクボタの売上高海外比率は年々上昇し、2006年度は47%にまで達した。2006年度の営業利益1315億円のうち7割は海外で稼ぎ出すほどだ。

 しかも、コマツなど他の建機会社が新興国の開発ラッシュを追い風に最高益を更新するのに対し、クボタは欧米の先進国で稼いでいるのが特徴的だ。実際に2006年度の営業利益では529億円を稼ぐ北米がドル箱である。

 稼ぎの源泉はシェアとブランドだ。米小型トラクタ市場でクボタのシェアは34%。ちなみに米自動車市場での日系自動車メーカーの合計シェアが31%である。意外なのは米国でのブランド知名度は農業関係者だけではなく、「都会のアッパークラスでも認知されている」(林副社長)こと。実際、米国のクボタのテレビCMでは、ガレージにロールスロイスとクボタ製品を並べているほどだ。

 なぜ、このようなCMが流れるのか。日本では想像しがたいが、米国ではミドルクラス以上は自宅に広大な敷地を有し、彼らが庭の芝刈りや園芸用にクボタの小型トラクタや建機を購入しているからだ。牧場を所有し、馬や牛を飼育している個人も珍しくないが、そこではトラクタや軽土木機械が必需品である。こうした環境のなか、クボタは日系自動車メーカー同様、「小型、高性能、丈夫」という信頼とブランドを築き上げているのだ。