日中で分かれる合意文書の評価 <br />未だ脆弱な日中関係に残された“宿題”握手する安倍晋三首相(左)と習近平総書記。両国の関係改善はスタートしたばかりで、依然として日中関係は簡単に壊れてしまう脆弱なものであることに変わりはない Photo: REUTERS/AFLO

ひとまずこれ以上の
関係悪化は避けられるか

「不正常な関係から正常な関係に戻す第一歩という意味で、大変重要な会談だった」(宮本雄二・元駐中国特命全権大使)

「長く存在してきた複雑な問題が1回の会談で解決するわけではない。だが、小異を残して大同に就くことが重要で、『小異』をこれ以上大きくしないことに双方が同意したのは、大きな前進だ」(高原明生・東京大学大学院法学政治学研究科教授)

 約3年ぶりに開催された日中首脳会談。日中関係は1972年の国交正常化以降、最悪の状態と言われるまで悪化していたが、今回の会談によって、これ以上の悪化は避けられるという見方が多い。

 この3年間、日中の間には二つの問題が関係改善の障壁となってきた。ひとつは尖閣諸島を巡る領土問題。もうひとつが靖国神社参拝問題などの歴史認識問題だ。

「対話のドアはいつでもオープンだ」といい、無条件での首脳同士の対話を呼びかけ続けてきた日本だが、中国側はこの二つの問題にこだわった。具体的には領有権問題が存在することを認める、靖国神社参拝をしないと確約することを求めていた。

 しかし、いずれも日本側には飲めない条件だ。特に領有権問題については主権に関わることで、一歩も譲れない。こうしてお互いの主張が正面衝突し、3年間の停滞が続いていた。