カンボジア 2014年11月11日

なぜ経済成長を目指すのか
「ポル・ポト映画」への授賞にみるERIAの果敢な挑戦

朝日新聞のマニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住。現在は現地のフリー ペーパーの編集長を勤める木村文さんのカンボジアレポート。東アジア共同体を象徴する「アジアコスモポリタン賞」の文化賞に今年、ポル・ポト政権下での自身の体験を描く作品で知られる映画監督リティー・パニュ氏が選ばれた。その意図するものとは?

 インドネシア・ジャカルタに本部のある「東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)」が選出する「第2回アジアコスモポリタン賞」の文化賞に10月、カンボジアの映画監督リティー・パニュ氏(50)が選ばれた。ポル・ポト時代を描いた最新作『消えた画―クメール・ルージュの真実』は2013年、仏カンヌ映画祭の「ある視点」賞を受賞、米アカデミー賞外国語映画賞のノミネート作品にもなった。

 ERIAは、日中韓と東南アジア諸国(ASEAN)、インド、オセアニアを含む16カ国の首脳が、将来の東アジア共同体の構築を目指して集う「東アジアサミット」の議長声明を受けて設立された。つまり、アジアの首脳たちが肝いりで立ち上げたシンクタンクであり、アジアコスモポリタン賞は2年に1度、16カ国の域内から選出されている。

 今年の大賞は、マンモハン・シン前インド首相、経済・社会科学賞にはピーター・デーヴィッド・ドライズデール豪国立大名誉教授と、歴史学者ワン・グンウ氏だった。文化賞にはパニュ氏のほかに、日本の宝塚歌劇団が選ばれている。

 私は、この「東アジア共同体」を象徴する賞にパニュ氏が選出されたことに、少なからず驚いた。

 疑問があるという意味ではない。むしろ、カンボジア在住者として、またポル・ポト時代に深い関心を寄せる者として、素晴らしい選出だと思っている。そして、「東アジア共同体」がこれから現代史とどう向き合うべきかを考えさせられた。

アジアコスモポリタン賞の文化賞に選ばれたリティー・パニュ監督【撮影/木村文】

 リティー・パニュ氏は1964年、プノンペンに生まれた。フランスから独立したカンボジアが、文化と芸術を愛したシアヌーク殿下(当時)のもと国造りに励み、プノンペンが「東洋のパリ」とまで呼ばれた時代である。だが一方でカンボジアには暗雲が垂れ込めており、1975年にはポル・ポト派が政権を握る。パニュ氏はほかの多くの子どもたちと同様に労働キャンプに収容され、父、母、親族を失い、1979年タイ国境からフランスへと逃れた。

 その後、パリの高等映画学院で映画を勉強し、ドキュメンタリー映画の監督としてデビュー。『サイト2:国境周辺にて』、『カンボジア、戦争と平和のはざまで』、『S21クメール・ルージュの虐殺者たち』など、海外でも高い評価を受ける作品を生みだしている。

『消えた画-クメール・ルージュの真実』は日本でも今年7月から公開がスタートした。

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