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岸博幸のクリエイティブ国富論

成長戦略の中身が見えてこない
自民党マニフェストの視界不良

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第51回】 2009年8月7日
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 先週は民主党のマニフェストの問題点を指摘しましたので、自民党のマニフェストについても同じことをしないとフェアではありません。ということで、今週は自民党マニフェストを考えてみたいと思います。本題が先送りになり続けて、本当にすみません。

間違っているマクロ経済運営

 結論から言うと、自民党のマニフェストの出来もかなりイマイチです。ただ、出来の悪い原因は民主党とはだいぶ異なることに留意すべきです。

 民主党のマニフェストは、国家戦略局の設置などを通じて政策決定のあり方を大きく変えようとしている部分については評価できるのですが、政策の中身については、かなり厳しいと評価せざるを得ません。バラマキ政策で“大き過ぎる政府”を目指しているのに、マクロ経済運営については何も書いていないからです。

 これに対し、自民党のマニフェストは、政策決定のあり方については官僚主導を継続しようとしているので評価できませんが、マニフェストの中身で“強い経済が必要”というメッセージを発している点は評価できます。しかし、政策の中身についてはあまり高くは評価できません。

 中でも問題は、間違ったマクロ経済運営をしようとしていることです。一言で言えば、財政支出を拡大したままで増税をしようとしているのです。まだ経済危機を言い訳にして今後3年間は積極的に財政支出を拡大することを臭わせる一方で、消費税増税の方向性を明示的に示しているのです。

 更に、財政健全化については「今後10年以内に国・地方のプライマリー・バランス黒字化の確実な達成を目指す。まずは景気を回復させ、5年を待たずに国・地方のプライマリー・バランス赤字(景気対策によるものを除く)の対GDP比の半減を目指す」と書いていますが、これに騙されてはいけません。

 経済財政諮問会議に提出されている内閣府の試算を精査すれば明らかですが、増税なしで2015年にはプライマリー・バランスの回復が可能なのです。それなのに、わざわざ10年もかけると宣言し、かつ“景気対策によるものを除く”と自らが行うバラマキは最初から除外しています。これは、今後もどんどんバラまくと宣言する一方で、財政が大変だから消費税増税も早くやりましょうと喧伝しているに等しいです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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