制裁措置はもはや適切ではない

ミャンマーを長期的視点で捉える<br />――プリシラ・クラップ・元駐ミャンマー米臨時代理大使プリシラ・クラップ/Priscilla Clapp
元駐ミャンマー米臨時代理大使。元公使参事官。アメリカ政府の外交官として30年以上のキャリアを持つ。1981~85年駐日本大使館Chief of Political-Military Affairs。1986~88年駐ロシア大使館Political Counselor、1989~93年米難民プログラムPrincipal Deputy Assistant Secretary。1993~96年駐南アフリカ大使館Deputy Chief of Mission。1999~2002年駐ミャンマー大使館Chief of Mission。

 ミャンマーにおける民主化改革は4年目に突入した。2015年には選挙も予定されている。いまこそ、米国はフレッシュで、長期的な視点からミャンマーとの二ヵ国間関係の重要性を捉える必要がある。

 1990年代以来、米国は20年以上に渡ってミャンマーに対して制裁措置を行使してきたが、いまとなってはもはや適切ではない。制裁こそがミャンマーの民主化を促すうえでもっとも有効な政策だという見方は、米国の東南アジアにおける戦略的利益を著しく傷つけるからだ。

 米国の20年以上に及んだ対ミャンマー制裁措置は二ヵ国関係の正常な発展を凍結させてきた。制裁は、ミャンマーの軍事政権が民主派を抑圧したり、少数民族に対して残虐なキャンペーンを行ったり、国家経済を破壊するのを阻止することができなかった。

 米国は軍事政権の指導者たちと対話する手段をほとんど持たないが故に、彼らに対して直接的な影響力を行使することができなかった。米国政府は、アジアにおける広い意味での利益という観点から、ミャンマーを重用視してこなかった。結果、二ヵ国関係は瀕死の重傷を負う羽目になった。

 しかしながら、2011年以来の政治的、経済的な改革は米国がミャンマーと向き合っていく上での前提を変えている。民主化改革故に、ミャンマーのアジアにおける重要性が根本的に変化しているのだ。孤立主義的な伝統を放棄し、国際的な投資、貿易、商業に門戸を開くことで、ミャンマーは世界中、特にアジアから投資を誘致するようになっている。

 ミャンマーは天然資源が豊富で、人々はよく教育されている。農業もポテンシャルに富んでいる。仮に改革が成功し、活気あふれる、自由な市場経済と民主的な政府を創造できれば、ミャンマーは東南アジアでもっとも繁栄が約束された国のひとつになるに違いない。