3回目の面接に進んでいたメーカーＡ社から連絡がなくて、娘はショックの様子で帰ってきた。

妻「Ａ社は残念だったわね」

父「各社の採用活動が並行して進んでいるので、数％の合格率の会社も多いみたいだよ。落ちても当たり前だよ」

妻「『短い時間では私の良さは分からない』と思えばいいわよ」

父「どういう点が足りなかったと思っている？」

娘「自分の気持ちが伝わらなかったという感じかな」

父「そうだね。やる気と意欲があっても、どのように伝えるかが難しいね。面接の力は、実際に繰り返して、試行錯誤しないと身につかないよ」

娘「たしかに回数を重ねると慣れてくるよ。でも『志望理由は?』と聞かれても、エントリーシート（ＥＳ）通りにはいかないしね。」

父「内容は一緒でも、面接では目の前に相手がいるからね。お父さんもインタビューで、どうすれば、うまく相手の話が引き出せるかにいつも苦心しているよ」

妻「具体的には、どうすればいいの？」

父「一つは、まさに、その具体性なんだよ。だからＥＳの時も話したエピソードが大事なんだ。特に、固有名詞と数値だと思うよ。固有名詞だとインパクトが出るし、『言葉の修飾語として数値が重要』と作曲家の阿久悠さんも言っているよ」

妻「面接相手の話が出たけど、裕美の演劇に打ち込んだというのは、あまりいい感じを持たない人も多いと思うの。ゼミ幹事や『業界セミナー』の世話人をやったことなどを強調したほうがいいんじゃない」

父「なるほど。そういう受け止め方をする人もいるかもしれないね。裕美は、ゼミ幹事やバイトなどの違うネタもあるんだから、少し幅広く構えて、相手に合う話を心がけてもいいかもしれないよ」