経営者としてやることは3つだけ

顧客満足と利益を両立させるため、<br />従業員が正しく判断できる仕組みをつくる星野佳路(ほしの・よしはる)1960年、長野県軽井沢生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。その後、日本航空開発、シティバンク等を経て91年に(株)星野リゾート代表取締役に就任。圧倒的非日常感を追求したラグジュアリーホテル「星のや」、小規模温泉旅館「界」など、現在33ヵ所の宿泊施設、スノーリゾートを展開。主な関連書籍に『星野リゾートの教科書』『星野リゾートの事件簿』など。

川上:星野さんは自著『星野リゾートの教科書』で、様々な経営学者の経営理論を“教科書通り”に実践していると述べていますよね。

星野:はい。この10年は、経営学のバイブルと言われる『競争の戦略』を書いた米国の経営学者マイケル・E・ポーターの理論を実践しています。彼は、「競争から抜け出す戦略が必要だ」と述べていますが、これを星野リゾートに置き換えると「マネされにくい独自の姿を確立すること」になります。
 その独自の姿を確立するために実践しているのが、ポーターの言う3つのステップです。

 1 生産性のフロンティアを達成する
 2 トレードオフを伴う
 3 活動間にフィット感を生み出す

 僕はいつも新入社員にこう言います。「両親に、『星野リゾートってどんな会社なんだ?』って聞かれたら、この3つをまずは言え」って。

 毎冬に行う会社の全体研修でも、1時間半かけてこの戦略について話をします。落語家のように毎年同じ話を繰り返し伝える(笑)。

 それほど重視しています。逆に言うと、経営者としてやることは、この3つだけです。