株式市場がパニックに陥った。パニック売りが世界の株式市場を駆け巡った。浮揚力を欠く日本はなす術もなく巻き込まれる。肝心要の米国は実態経済の悪化がいよいよ深刻度を増し、大リセッションが迫り来る。金融当局の緊急利下げも、市場にかかる下向き圧力を反転させるには力不足だ。想定外の危機が勃発したわけではない。現実のものとなったのは想定されていた懸念だ。しかし、市場心理の悪化に歯止めをかける決定打はない。

 「売り時がついに来た!」。これまでサブプライム問題の余波にもまったく意に介さなかった、上海在住のある大口個人投資家は、1月22日、保有する銀行株をすべて売り払った。この日、上海、新◯(しんせん)で上場銘柄の過半がストップ安となり、総合指数は前日比で7.2%下落。前日、中国銀行がサブプライムで多額の損失を計上と報じられたのがきっかけだった。

 株安による疑心暗鬼は香港に飛び火、ハンセン指数は終値で8.7%下落し、香港金融管理局が0.75%の緊急利下げを行なった。インド株式市場も大混乱となった。取引開始直後、SENSEX指数は11.5%急落し、取引停止に。再開後3%安まで戻したが、その後再び13%安の乱高下を演じた。

 中印市場のパニック売りは回りまわって米国市場を襲い、ダウ工業株30種平均は一時460ドル以上の下げとなった。まさに連鎖的な世界同時株安である。

 米国経済が落ち込んでも中印の株式市場は大丈夫という投資家の期待が一気に剥げ落ちた。「多くの個人投資家は、いまだ呆然としている」(高橋正樹・大和住銀投信投資顧問香港シニアポートフォリオマネージャー)状態だ。

売り込まれる日本株 
株価指標が機能不全に

 「今の株価は安過ぎる。買収リスクの高まりに恐怖を覚える」(東証一部大手メーカー社長)と訴える経営者がにわかに増えている。