厚生労働省の医療介護改革推進本部で11月13日に公表する予定だった「医療保険制度改革試案」が、ギリギリになってお蔵入りになった。

 直前になっての公表見送りは異例のことだ。しかし、伏線はあった。

 数日前から、消費税引き上げの先送りと衆議院の解散総選挙が、突如として報じられるようになったからだ。

 そして、既報通り、11月18日、安倍晋三首相は首相官邸で記者会見を開催。2015年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを1年半延期し、その判断について国民に信を問うとして、21日に衆議院を解散して総選挙を行うことを表明したのだ。

 それにしても、なぜ、直前になって医療保険制度改革試案の公表が見送られたのだろうか。

 実は、医療保険制度改革試案には、後期高齢者医療制度の特例措置の見直しなど高齢者に負担増を求める内容が盛り込まれている。

 高齢者の票がほしい自民・公明両党にとって、選挙戦を前にそれが公表されるのはあまりにも都合が悪いことだったのだ。

「姥捨て山」の批判噴出で
慌てて導入した特例措置

 後期高齢者医療制度は、2008年に新たに創設された高齢者向けの新たな医療保険だ。

 それ以前の制度では、年齢によって加入する健康保険を区切ることはなく、75歳以上でも会社員なら勤務先の健康保険、自営業や無職の人は国民健康保険、会社員や公務員の子どもの扶養に入るなどの方法がとられていた。

 しかし、いずれの健康保険でも増え続ける高齢者の医療費は悩みのタネとなっていた。とくに国民健康保険の財政は深刻で、高齢者医療を支える新たな枠組みが求められるようになった。

 そこで作られたのが後期高齢者医療制度で、75歳になるとそれまでの健康保険を脱退し、すべての人が新制度に加入することになったのだ。そして、75歳以上の人の医療費は、税金5割、現役世代の健康保険からの支援金4割、高齢者本人の保険料1割で賄うという財源構造が構築された。

 ところが、導入されるやいなや、後期高齢者医療制度は「高齢者を切り捨てる姥捨て山」といった批判が噴出するようになる。