「メニュー、オペレーション、価格、立地、すべてにおいて一度リセットして、ビジネスを組み立てなおさなければファミレスの未来はない――。」

 ファミリーレストラン一筋35年間経営に携わった業界関係者は、ため息交じりにこうつぶやく。

 それもそのはず、日本フードサービス協会が発表した2009年1月のファミレス既存店売上高は、前年比5.4%減。2008年11月は休日が3日多かった影響で前年を上回ったが、景気後退が鮮明になった2008年夏以降、一向に回復の兆しを見せていない。

 3月3日に業績の下方修正を発表したセブン&アイグループは、「デニーズ」などの外食事業を当初予想の営業赤字15億円から同30億円へ悪化した。ロイヤルホールディングスの2011年までの中期経営計画でも、主力業態である「ロイヤルホスト」では、売上高の増加は見込んでいない。野村グループ傘下のすかいらーくも、2008年12月期は本誌取材によると140億円前後の経常損失となる見込みだ。

 各社とも手は打っている。大量閉店などリストラを加速させており、売上高、利益共に低迷するのは当然とも言えるが、既存店が回復しない状況では、今後の明るい展望は描けない。

 セブン&アイグループはデニーズ等を2009年2月期は65店閉店の予定だったが、8月中間期時点で、期末までに68店閉店すると修正。外食事業全体の店舗数も、当初期末時点の予想店舗数1011店を994店まで減らすとし、リストラを前倒しで行なっている。価格に関しても、春のメニュー改定ではハンバーグやパスタなど単価が700円代のものが増え、価格レンジを下げる戦略を取っている。

 ロイヤルホールディングスも2009年12月末までに40店の閉店を予定。さらに、700~900円台のメニューを拡充するなど、価格レンジを下げた。

 “ファミレスの父”とも言える横川竟氏は、「ファミレスに行くという新たな価値や理由が打ち出されなければ復活できない」と語っている。現在、各社が行なっているリストラ策は閉店が主だ。もちろん、不採算店の閉店は必要。しかし、そればかりではなく、かつての価値である“家族で洋食を唯一食べられるのはファミレス”に変わる価値を見出す必要がある。

 業界関係者が漏らすように「すべてにおいてリセット」が必要だ。既存のファミレスの枠の中での変化では、業界に垂れ込める暗い影は晴れることはないだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)