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11月26日 7時50分
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【新潮流】第122回 左利き - 広木隆の「新潮流」

◆「不器用ですから」。高倉健さんが言うから様になるのだ。同じセリフを僕が口にしたところで、「そうだよね」でおしまいである。確かに僕は不器用だが、それは左利きだからである。右利き用に作られているハサミや缶切りがうまく使えない。ホテルのビュッフェなどでスープをよそうときに使う、おタマの片方が細くなってるやつ - レードルというものらしい -も苦手で、必ずこぼしてしまう。急須でお茶を注ぐのも下手だ。取っ手が(僕からみれば)逆についているので手を向こう側にひねって注ぐ格好になる。僕が何かを切ったり注いだりすると、必ずぐちゃぐちゃでびしょびしょになるのである。

◆左手で字を書くと、「アメリカ人みたい」とよく言われるがアメリカ人に左利きが多いというのは誤解である。左利きのひとの比率は全世界的に10~15%で共通だというから、利き手の問題は地域、民族、社会的な要因というより生物学的な要素が強いのだろう。社会的な要因が影響するのは後天的に左利きを矯正するケースである。左手を不浄とする宗教もあるし、かつて左利きは身体的な障害と見なされたこともあった。言語的にも「左」は「右」に劣る地位に甘んじている。英語の右=RightはThat's rightと使うようにまさに「正しい」という意味だし、ロシア語の右=プラーヴダは「真実」という意味である(ソ連共産党の機関紙の名前はこれに由来する)。

◆政治的に「左」「右」という場合は、左が進歩主義、右が保守を指すのが一般的である。フランス革命後の国民議会で、革新・急進派が「左翼」、保守派が「右翼」の座席位置を占めたことが起源だという。現代社会においてはステレオタイプな左・右の分類は意味をなさないのかもしれない。しかし、ある事柄に対しての相対的位置を示すには有用だろう。例えば安倍政権に対するメディアの立ち位置などだ。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、「安倍政権打倒を目指しているのは朝日新聞と東京新聞、毎日新聞。逆に支持しているのは読売新聞、産経新聞」と指摘する(現代ビジネス「ニュースの深層」)。政権を真ん中にした時、左寄り右寄りという分類は成り立つ。

◆このところ、三島由紀夫や福田恆存などを取り上げてきたので、僕のことを「右」寄りだと思われる方がいるかもしれないが、僕は「左」である。利き手のことではない。左党であるのだ。大工道具のノミは左手で持つ(右手は槌を持つ)。左手=ノミ手=呑み手=飲みてえ。飲兵衛なのである。酒さえ飲めれば万事オーケー。こういう人間の主義思想は正真正銘、ノンポリであることは言うまでもない。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

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