保守性・拡張性・災害耐性で
サーバ環境の見直しを

――サーバの集積度が向上し、より大容量の電力や空調性能、高度な運用・保守が求められるなか、“動脈硬化”を起こしつつあるデータセンターにどう対応していくべきでしょうか。

谷田部 キーワードとして、「保守性」「拡張性」「災害耐性」が挙げられます。一度設置したデータセンターは、長期にわたって安定運用することが求められます。移転する機会は多くありません。次の設備更改時期を迎えるまで10~20年以上運用することも一般的です。長期的な運用を前提と考えると、まずはこの3点が重要となります。

星島 保守性と拡張性については、電源、空調、建物をトータルで管理することが重要です。保守をしないデータセンターは健康診断を受けない人のようなもので、人間と同じように、血液、循環器、消化器など、体全体のことを考えて適時適切な治療をしていくことが必要です。

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 例えば10年~15年程度に一度行われる電力や空調など大型設備の更改は、根本的な改善方法の一つです。

 ただし、一般的なオフィスなどと違い、データセンターは運用を停止することができないので、無停電で作業を行う必要があります。

 特にUPS(無停電電源装置)更改には無瞬断切替えのスキルが有効で、これは手術中の人工心肺のように血流を止めない、つまり電力の供給を止めることなく設備更改することが可能となります。

 拡張性はサーバの集積度向上と関係しています。将来のさらなる集積度向上を見据えて、既存の電力、空調設備容量を改善し省エネを図ることにより、より長期間の運用が期待できます。

 動脈硬化を起こしつつある人が、適切な運動などにより、循環器系の機能回復を図るようなものではないでしょうか。

chart構築・運用双方の観点から、データセンターのマネジメントを行う
出所:NTTファシリティーズ資料

 NTTグループは総床面積97万5000平方メートルに相当するデータセンターを保有しており、現在まで世界一の規模を有しています※4

 その構築・運用を支える経験と蓄積した技術・ノウハウに基づくデータセンター構築トータルソリューション「Fデータセンター」では、電源・空調・建物を総合的にマネジメントして施設の信頼性を高めるとともに、構築・運用双方の観点からの継続的な改善を行い、ライフサイクルコストの最適化を実現しています。

谷田部 本来は建設段階の設計から、保守性や拡張性を踏まえた運用まで一貫して考慮しておくことが重要です。企画・設計段階から運用・保守、将来の設備更改までを計画しておくべきです。

 先ほどお話したように、一度設置したデータセンターを運用計画よりも早く動かすということは例外的な場合を除いてないので、場所選びは重要です。その意味で立地と災害耐性は慎重に検討する必要があるでしょう。

 地震、津波、豪雨などの発生実績のある災害に対しては、国や自治体が公開している災害危険度など利用することができます。これを元に、耐震/免震対策をどこまで図るか、災害時に要員を派遣するアクセスが確保できるかなどを検討します。

 先の御嶽山の噴火では大きな人的被害、降灰による家屋の被害などを生じましたが、2013年から火山災害についても、国の大規模火山災害対策検討が進められています。今後は火山灰によるデータセンターの空調機能低下なども課題となるでしょう。 

※4 米・テレジオグラフィー調査による