ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

「防衛本能の原点」に立ち返れ!
サイバーセキュリティの基本は「身を守るおしえ」にあり

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第6回】 2014年12月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
3
nextpage

ロシアに対する危機感から
バックアップデータをロンドンに移す

 さらに、反政権デモ隊と治安部隊の衝突が拡大したウクライナ問題をきっかけにロシアに対する危機感を募らせたエストニアは、バックアップデータをロンドンに移しました。日本では考えられないことですが、国民のデータを丸ごと国外に持ち出したのです。

 もしこんな重要なデータが外に漏れたりしたらとんでもないことになります。そこでエストニアは、まさに“ウルトラC”ともいえるウラ技を使ったのです。それは、大使館の治外法権を認めるジュネーブ条約をうまく解釈・適用し、バックアップデータを置くデータセンターの一角を治外法権にするという方法でした。これで他国民は一切タッチできなくなったというわけです。

 世界で一番セキュリティに強い国は、こうしたサイバー攻撃やロシアの脅威に鍛えられて誕生しました。もし再び大規模なサイバー攻撃を受けたり、首都タリンで大災害が起きたりしても、この国の機能が失われることはないでしょう。

日本人の完璧主義が
セキュリティ対策の発展をジャマする!?

 サイバー攻撃やハッキングは、どんなに手を尽くしても100%防ぐことは不可能です。いくら防ごうとしても、ハッカーたちは弱点を探し出し、そこを狙ってくるからです。第一次世界大戦後、ドイツの侵攻を恐れたフランスが国境に築いた「マジノライン」(要塞線)のように、万全の準備をしたつもりでも破られる時にはあっさり突破されてしまうのです。

 先日のマイクロソフトの緊急バッチもそうです。私の場合、ウィルス攻撃の危機が迫るとマイクロソフトが特別なアラートで知らせてくれるのですが、あのときは「あと5分でバッチが出るから、すぐに対処してください」という緊迫した内容でした。ウィルスの脅威は想像をはるかに超えて年々大きくなっています。

previous page
3
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

⇒バックナンバー一覧