戦略は「地域を限定的にして訪問回数を増やす」

 ……山崎文栄堂は、渋谷区を中心に商圏を絞っていますね。

小山 環境整備では、「今日は、誰が、どこを磨くのか」を決めていますが、山崎社長は営業活動においても、テリトリーを明確に決めています。以前は、全国どこでも仕事があれば出向くというスタンスでしたが、それでは非効率です。そこで、「地域を限定的にして訪問回数を増やす」というランチェスター戦略(弱者の法則)に則り、商圏を全国から、本社のある渋谷区に限定しています。

山崎 渋谷区内にある約2万社に対して1社1社、聞き取り調査を行っています。まず、ライバルと自社の戦力を把握する必要がありました。そこで1社1社聞き込みに回ることにしたわけです。事務用品を売り込もうとすると警戒されますから、「調査」という名目です。「どちらをお使いですか?」と聞くだけですね。

シェア率9%が
4年で39%に!

 ……地域を限定することによるメリットは?

山崎 地域を限定したことで、早く対応できるようになったり、訪問回数を増やすことができます。3~4回も訪問していると、お客様も営業マンに親近感を持っていただけるので、「あの営業マンに頼んでみるか」と思ってくださいます。「環境整備」は繰り返し同じところを磨くから、ピカピカになるわけですよね。人と人も同じではないでしょうか。何回も顔を合わすからこそ、信頼できるようなる。繰り返し伺うからこそ、お客様の変化にも気がつけるようになるのだと思います。

小山 2009年、渋谷区内における山崎文栄堂のシェアはわずか約9%。でも、2013年には39%にまで伸びています。渋谷区はライバル会社も多く、激戦区です。その中で39%という数字は驚異的だと思いますよ。

【朝一番の掃除=環境整備のポイント】
●「地域を限定的にして訪問回数を増やす」というランチェスター戦略(弱者の法則)への応用ができる

<著者プロフィール>
小山 昇(こやま・のぼる)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年生まれ。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を優良企業に育て、「12年連続増収増益」を達成。日本で初めて、「日本経営品質賞」を二度受賞(2000年度、2010年度)。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開し、業種横断的に500社以上の会員企業を指導。指導企業のうち、「5社に1社は過去最高益」「13年連続倒産企業ゼロ」を達成。
2004年から「1日30万円のかばん持ち」制度を創設。小山昇のかばん持ちをすることで、現場で体感する経営者を日々育成中。現在、約70社・1年半待ちの人気ぶり。
そのほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回の講演・セミナーを開催。現場の叡智が詰まった内容は、全国各地から「今日から仕事に役立つ」と現場見学会参加者があとをたたない。机上の空論は一切なし!実務中心の内容が口コミを呼んでいる。おもな著書に、『強い会社の教科書』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』(以上、ダイヤモンド社)、『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(あさ出版)、『増補改訂版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)など多数。