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12月5日 8時1分
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【新潮流】第129回 不戦勝 - 広木隆の「新潮流」

◆師走に入ってNHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」もいよいよ大詰めを迎えている。「軍師官兵衛」は言わずもがな、戦国時代の名参謀、黒田官兵衛の生涯を描いたドラマである。1年に及ぶ全50話のなかで、最大の見せ場は第40回、難攻不落の小田原攻めだろう。秀吉の天下統一を阻む最大の敵・北条氏の居城である。包囲が長引くなか、官兵衛は帯刀もせず単身で敵城に乗り込む。所領安堵の約束と引き換えに北条氏を説き伏せ小田原城開城に成功したのだった。

◆官兵衛の戦法の神髄は、「戦わずにして勝つ」ということにある。それは中国の兵法家・孫子に倣ったものと言われる。「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」(孫子「謀攻篇」)。連戦連勝が最高の勝ち方ではない。戦わずして勝つことこそ、最高の勝ち方であるというのだ。

◆衆院選も公示から3日経ち、明日から公示後初の週末を迎える。選挙戦もまさにたけなわ...と普通なら書くところだが、なんとも盛り上がらない選挙戦となっている。街を走る選挙カーが少ない。街中に貼られている候補者のポスターが少ない。抜き打ち解散で、選挙資金をはじめいろいろな準備が間に合わないのだ。そもそも野党はまともに候補者を立てられていない。2年前の衆院選対比、野党の候補者は大幅に減少している。民主・維新を中心に野党は候補者を一本化したとうそぶくが...。

◆戦う相手がそもそもいないに等しいのだから与党の勝ちは見えている。問題はその勝ち方だ、と言われたが昨日の日経新聞が報じた世論調査によれば自民党は300議席に迫る勢いだという。過去最低になるとみられる投票率の低さも考えれば、自民党は歴史的な大勝を収める可能性がある。

◆思えば、このタイミングでの解散総選挙は絶妙だった。GDPが予想外に下振れし、消費増税は先送りせざるを得ない。それを逆手にとって解散総選挙に打って出る。増税を争点に戦うのは自殺行為に等しいので野党も増税延期を容認する。争点はアベノミクスの成否に移るが、実は景気はそれほど悪くない。来週発表のGDP改定値は上方修正される可能性が濃厚。おまけに日経平均は年初来高値を連日更新だ。いったい誰がこの絶妙のシナリオを描いたのだろう。安倍さんの「軍師」は誰なのか、非常に興味がある。「軍師」「参謀」=「戦略家」、英語で言えば「ストラテジスト」である。ぜひ安倍政権の「ストラテジスト」氏に諸々ご伝授願いたいものである。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆

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