株式レポート
12月9日 18時0分
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2015年相場展望 Vol.0 【予告編】 - 広木隆「ストラテジーレポート」

年末である。忘年会、クリスマス会のシーズンだ。宴会は楽しいが困ったことがある。たいていの会は夜の7時くらいからのスタートである。こっちは5時を過ぎたらもう飲みたくてウズウズしているので、会社に残っていても仕事にならない。そこで、すぐに出かけられる者を誘って早めに飲み始める。1次会のあとに流れるのが2次会。1次会の前から飲む会は0次会である。

それに倣えば今回のレポートは2015年相場展望 Vol.1に先立つ、Vol.0である。巻末で来年の相場展望について「頭出し」をさせていただく。

GDP改定値

前回のレポートでは、7-9月の法人企業統計で設備投資の拡大が確認され、GDPの2次速報(改定値)では大きく上方改定されるだろうと予想した。事実、法人企業統計では設備投資の拡大が確認され、それを受けて民間のエコノミストは一斉に上方修正をおこなった。民間予測の平均は年率0.5%減にまでマイナス幅が縮小するとのもの。国内最大手証券はプラスに転じるとの予想を出した。

ところが発表された改定値は年率1.9%減と一次速報から下方修正された。エコノミストの予想はまたも大外れとなり、そのことに対する批判も目にする。しかし、これは一次速報の予想が大外れになった時から言われていることの繰り返しである。内閣府が推計に使っているおおもとのデータが明らかにされていないのに、それを予想するのは至難の業なのだ。しかもこの7-9月期の改定値予想は、それ以外の期の改定値に比べて格段に難しい。7-9月期は前年度・前々年度の確報値が反映されるためである。確報と速報では推計方法が異なる。よって過去のGDP系列が大きく修正され、季節調整の値に影響が出る。

こうしたことを考慮しても今回のGDP改定値の下方修正は腑に落ちない。設備投資が一段と落ち込んだ結果となっているからである。これは他の統計、特に法人企業統計の結果と著しく整合的でない。この点について本日の日本経済新聞は以下のように解説しているが、とんでもない誤りである。

<要因の一つは「法人企業統計とGDPの調査範囲の違い」(内閣府幹部)だ。GDPはソフトウエアへの投資を含むが法人企業統計は含まない。ソフト部門は米マイクロソフトの基本ソフト「ウィンドウズXP」のサポート切れによって、1〜3月期に駆け込み需要があった。足元でもその反動減が続いている可能性がある>(12月9日付け日本経済新聞「設備投資 推計に差」)

いかにももっともらしい解説だが、法人企業統計はソフト部門も含む統計である。ただ、報道発表の資料では設備投資の概要を知らせるのに、ソフトウェアを除く全産業の季節調整値前期比を使うため、そのような誤解が多いのだ、と内閣府・経済社会総合研究所(GDP四半期速報を作成する部署)の設備投資の担当者も苦笑していた。

日経の記事では法人企業統計では金融・保険も含まないとあるが、法人企業統計はちゃんと金融部門の設備投資も統計をとっていてGDP改定値の算出にはそれも含まれている。
今回のGDP改定値は法人企業統計の内容をフルに反映したものなのだ。では、法人企業統計の設備投資が前期に比べ拡大したにもかかわらず、どうして一段の下方修正になったかと言えば、一次速報段階では、今回の法人企業統計の設備投資額より、もっと大きい数字を推計していたというのである。だから実際に出てきた法人企業統計の数字を使うと下方修正となったというのである。

では、ますます疑問に思うのは、一次速報段階では、今回の法人企業統計の設備投資額より、もっと大きい数字を推計していながら、設備投資は減少だったというのはどういうわけか。これは日経新聞の記事も半分だけ正しいことを書いている。<GDPの設備投資は、速報段階では設備を「売った側」の動きを示す経済産業省の生産動態統計で試算する>と。

正確にいうと「売った側」=供給サイドと「買った側」=需要サイドとふたつ併せて按分するのである(そしてその按分も単純に2で割るのではなくウェイトがかけられている)。だから、ますます設備投資の全容は外部からは分からないものとなるのである。

速報段階でも需要側のデータと合算するのだが、その需要側データは完全な「推計」である。その「推計」を堅調に見ていたが、出てきた法人企業統計は推計値よりも低かったために0.4%減に下方修正になった。真相はそういうことらしい。

しかし、もうどうでもいい。こんな出鱈目な数字なんか信じない、と思っているのは市場だろう。このGDPの下方修正を受けて始まった昨日の株式市場で、日経平均は7年4カ月ぶりに1万8000円の大台を一時回復したのだから。

押し目待ちに押し目なし

もうひとつ予想を外した。前回のレポートで僕は、選挙結果が出るまでは、もみ合いで日柄調整になるだろうと予想したが、市場は待てなかったようである。相場環境は良好だと述べた。それは正しかったのだが、テクニカル面の過熱感もあり、一段高は選挙の結果を見てから、掉尾の一振だろうと予想したのだが…。

テクニカル面の過熱感を無視して市場が上値追いとなったのは以下の理由による。

1) 日銀のETF買いが市場の下支え要因となる安心感
2) 自民党の優勢観測
3) 円安の進行
4) 買い遅れた個人投資家の押し目買い意欲

10月末の追加緩和以降、日銀はETFを1回のオペレーションあたり380億円程度購入している(グラフ1)。これが確実に相場の下値不安を後退させている。また、5日付けのコラム【新潮流】第129回「不戦勝」でも述べたが、自民党が300議席に迫る勢いだという。今回の衆院選はそもそも戦う相手がいない選挙、不戦勝のようなものだ。与党は歴史的な大勝を収める公算がでてきた。与党の勝利は政治の安定、長期政権樹立で構造改革が進む期待につながり、外国人の買いを呼び込む材料となる。



日銀緩和が加速しアベノミクス信任選挙とも言える衆院選で与党勝利が濃厚、これに米国景気の強さが相まってドル円相場は一足先に120円の大台をクリアしている。為替との連動性が落ちてきたとはいえ、ドル円120円台乗せはさすがに株式相場の追い風になる。
そして4つ目は個人の押し目買い意欲の強さだ。毎週月曜日に「広木隆のマーケット展望Weekly」というウェブ・セミナーをおこなっている。これは僕が1週間の相場観を簡単に述べたあとで視聴者からチャットで寄せられた質問に回答していくという形式の対話型セミナーであるが、最近は、「押し目はあるのでしょうか?」「あるとしたら、どのタイミングでどれくらい押すでしょうか?」という質問が目に見えて増えている。みんな押し目を待っているのである。NISA口座での使い残しも相当あるに違いない。

日経平均は、わずか1カ月半前は1万4500円台の安値に沈んでいた。その安値を拾ったのが個人投資家である。外人の売りに買い向かって安値を拾った(グラフ2)。見事であった!僕は快哉を叫んだものだ。相場の底値圏で書いたレポートで、再び「相場は間違っている」といい、自分のNISA口座でインデックスファンドを買ったことも明らかにした。そうした僕のアドバイスも少しは個人投資家の参考になったとしたら大変うれしい限りだ。



ところが、その後、相場が上昇に転じるといつもの悪い癖がでる。すぐに利食ってしまうのだ。利食えたのだから、よしとするが、そのあと相場は一段高だ。押したら買おうとみんなが再エントリーのタイミングを待っている。典型的な「押し目待ちに押し目無し」という状況である。

選挙結果が出るまでもみ合い、というシナリオが外れた以上、ごく短期の相場観を修正すれば、衆院選後は材料出尽くしで一旦調整となるだろう。ちょうど外国人がクリスマス休暇入りを控えて手仕舞い売りを出す頃である。

2015年相場展望 Vol.0 【予告編】

予告を。2015年の日本株式市場は大幅な上昇となるだろう。来年の相場を「モラトリアム相場」と名付けたい。市場の一部ですでに指摘されていることだが、2017年は相当、タフな年になるだろう。消費増税が2017年4月に先送りされ、今度は景気付帯条項をつけずに実施されるからだ(現在は自民党の公約だが、まず間違いなくそうなる)。景気の良し悪しに関係なく増税するというのである。ということは、2017年の景気は、4月をはさんで駆け込みとその反動減という、今年見られたのと同じパターンになるだろう。

今度は景気が悪いから先送りにすることができない。ということは、何が何でもそのときには、めちゃくちゃ景気が良くなっていてもらわねば困る。景気浮揚のために打てる手はすべて打つ。政策が総動員されるだろう。はっきり言って、2017年4月までにバブルのような景気を作り出し、消費増税と日銀の出口政策で過熱を冷やす、くらいの状況になるのではないか。

日銀の出口政策と書いたが、ただでさえ国債購入は限界に近付いている。2017年まであと2年、同じような量的質的緩和が続けられるとは思えない。これも前段と同じ文脈だが、その時までにはデフレ脱却を完全なものにしている必要がある。物価上昇率2%以上が安定的に達成されているはずである。そういう状況で日銀が出口を探る状況になれば、金利は急騰を免れ得ないだろう。また株式市場も日銀のETF買いによって、相当程度上がったのだとすれば、出口政策で日銀がETFを売却する際には、相当程度、下がるということになるだろう。

兎にも角にも2017年に近づくにつれてリスクが顕在化してくることが予想される。そんなことは今から予想されることなので、通常、半年から1年先を織り込む株式市場では2016年の早い段階から警戒モードになるだろう。そう考えると、安心して相場を張れるのは2015年いっぱいだということである。

来年は、その先に修羅場がくることを知りつつ、束の間のユーフォリア(幸福感)を楽しむ「モラトリアム相場」となるだろう。こうした状況を喩える常套句がある。「音楽が鳴っているあいだは踊り続けなければならない」

  「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言っていることはわかるかい?踊るんだ。踊り続けるんだ。何故踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなこと考えだしたら足が停まる。一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう。」(村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』)

羊男はそう言うのだ。
オドルンダヨ。オンガクノツヅクカギリ。
それはまさにバブル経済の本質である。

来年は、ひつじ年である。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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