12月8日に公表されたGDP(国内総生産)第2次速報によれば、2014年7~9月期の実質GDPの対前期比年率換算値はマイナス1.9%となり、第1次速報値のマイナス1.6%より悪化した。これは、安倍晋三内閣の経済政策の失敗を明確に示すものだ。

 以下では、(1)円安による実質雇用者報酬の減少の影響は、消費税増税の影響より大きいこと、(2)したがって、現時点でもっとも重要な経済政策は円安の抑制であることを示す。

実質GDP値は、
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 法人企業統計による7~9月期の設備投資額は、季節調整済前期比増加率で見て、全産業で3.1%、製造業は9.3%という高い伸び率だった。このことから、GDP第2次速報値は上方改定され、対前期比がプラスになるのではないかと期待されていた。しかし、その期待は裏切られた。

 GDP統計の実質民間企業設備(設備投資)の対前期比年率換算値は、第1次速報のマイナス0.2%より悪化して、マイナス0.4%となった。公的資本形成(公共事業)も1.4%と、1次速報の2.2%から下方改定された。

 7~9月期の実質GDPは、523.8兆円だ。これは安倍内閣発足直後の、2013年1~3月期の523.9兆円より若干少ない(図表1参照)。つまり、一時的な需要の伸びによって13年のGDPが増えたものの、7~9月期には元の水準に戻ってしまったわけだ。

アベノミクスの失敗を明確に示すGDP改定値 <br />金融緩和政策を根本から見直し、円安を抑制せよ

 ただし、GDPの対前期比にそれほど大きな意味があるとは思えない。なぜなら、7~9月期の実質GDPの対前期比をマイナスにしている大きな要因は、実質在庫投資が前期比で約2兆円も落ち込んでいることだからだ。これだけで、実質GDPの落ち込み約2.5兆円の過半を占める。短期的な需要動向の予測で大きく変化する在庫調整の額自体に、それほど重要な意味はない。

 重要なのは、個々の需要項目の動きである。なかでも重要なのは、実質消費だ。以下では、実質消費がなぜ落ち込んでいるのかを検討しよう。