東京五輪開催に向け
走るアジアの人たち

  五輪開催が決まると、不動産価値が上がる。それは世界中のオリンピック開催国で起きてきた現象だ。特に、景気上昇期に決まると、上昇が顕著となる。その代表例が中国と韓国である。

 ギリシャのように経済全体の低迷期にオリンピックを呼び、それをきっかけに景気を盛り上げようとしても、うまくいかない。かえって負担増により、経済がさらに悪化する。しかし、景気が上がり始めているときにオリンピックを呼ぶと、景気上昇カーブの角度がはね上がる。

 中国も韓国も、オリンピック開催まで不動産価格が上がり、オリンピック開幕時にはとんでもない価格になっていた。そのとき、中国と韓国の人はこう思った。「こんなに上がるのなら、もっと早く買っておけばよかった!」。

 その反省がまだ心に残っているうちに、東京五輪が決まった。

「東京でも、わが国と同じことが起きるぞ」。そう考えた隣国の人々が東京の不動産価格を見ると、意外に安い。13年9月の時点では、都心一等地の最上級マンションが台湾の台北より2割以上安かった。シンガポールと比べて東京だと半値で買えた。「これはもうかる」と多くのアジア人が東京中心地のマンションを買い始めたのである。

「中国と韓国の人は以前から買っているが、最近は台湾、シンガポール、タイの人も買いに来るようになった」と不動産関係者が驚いたのも、その頃からだった。

 20年東京五輪決定は、それほど大きなインパクトだった。しかし、多くの日本人はそのことに気付いていない。

 気付かぬうちに事態は進み、最近は都心マンションに外国人の姿が目立つようになってきた。