ベンチャー・キャピタルにとって、有望なベンチャー企業の早期発掘は重要な戦略だ。しかしアナリティクスの進化によって、いまや「未来の起業家」をアルゴリズムで予測し接触するVCが現れているという。その実践者、ブルームバーグの投資部門トップが経緯を語る。


 ベンチャー・キャピタル(VC)はゆっくりと、しかし確実に、データ主導型ビジネスとしての色合いを強めている。非上場企業に関するデータは乏しいこともあるものの、どのベンチャー企業に投資すべきかを判断するために定量分析を頼みとするVCがますます増えている。だが、金融情報の総合サービスを提供するブルームバーグの投資部門、ブルームバーグ・ベータは、その一歩先を行こうとしている。アルゴリズムを用いて、未来の起業家を――本人が起業する“前”に――選び出すのだ(英語記事)。

 はたしてアルゴリズムは、未来の起業家をどれほどうまく選べるのだろうか? ブルームバーグ・ベータを率いるロイ・バハトに話を聞いた(聞き手:HBRアソシエート・エディター、ウォルター・フリック)。

HBR:御社について簡単に教えてください。

バハト:ブルームバーグ・ベータは、金融関連の情報・ニュースを提供するブルームバーグの出資を受けています。ベンチャーの世界で起きている特殊な現象に気づいた親会社ブルームバーグが、1年と少し前(2013年6月)に当社を立ち上げました。私が「デイ・ゼロ・スタートアップ」(創業ゼロ日目のベンチャー企業)と呼ぶ段階にある起業家の多くは、他社と大規模な提携を結ぶには早すぎたり、事業のやり方を模索している途中であったりします。こうした人々と有意義な関係を結ぶ唯一の方法は、彼らに投資することなのです。

 今日の起業環境には、ある特徴が見られます。過去数十年の間は、起業後のベンチャーが育つのをしばらく待って観察したのちに、投資対象としての重要性を判断すればよかった。しかしいまは、無名の2人の起業家によるベンチャーが、ほんの一瞬で大きなビジネスに化けることがあります。したがってVCとしては、早い段階で関与しなくてはなりません。ファンドは投資収益を求めて投資するのであって、いわゆる「戦略的価値」のためではありません。

――マターマーク(Mattermark:ビジネスデータの分析を手掛ける企業)との協働について教えてください。

 当社は最初に、「起業家の存在をより早い段階で知る方法はないだろうか」と考えました。一方で私たちは、企業が顧客に関する予測と選別を行う際に、データに基づく予測分析を活用しているのを見ていました。そこで思ったわけです――「起業家が正式に起業する前に、それを予測して関係を結ぶことは可能だろうか」と。

 そこで当社はマターマークと協働し、VCが過去に出資した起業家と現在出資している起業家のデータを基に、予測モデルを構築しました。このモデルを用いて、まだVCの出資を受けておらず起業もしていないけれど、将来きっとそうするだろうと思われる人々を選ぶのです。150万人に及ぶ人材プールの中から、当社が重点を置くシリコンバレーとニューヨークにいる候補者350人を選び、実際に接触しました。