橘玲の日々刻々 2014年12月15日

集団的自衛権をめぐる
ジコチューな議論は不毛でしかない
[橘玲の日々刻々]

 ひとは誰でも、自分が世界の中心にいると思っています。映画や小説で「世界の終わり」が繰り返し描かれるのは、自分が死ねばこの世界もいっしょに消えてしまうからです。この臨場感は圧倒的なので、世の中にジコチューばかりが溢れるのは仕方のないことです。

 自分のことだけでなく、「国家」を語るときにも私たちは無意識のうちにジコチューになっています。集団的自衛権をめぐる議論が不毛なのは、「日本が戦争に巻き込まれる」とか、「沖縄の米軍基地がなければ日本は守れない」とか、常に自分(日本)のことしか考えていないからです。

 第二次世界大戦がヒロシマ、ナガサキへの原爆投下という悲劇で幕を閉じたあと、大量の核兵器を保有する大国同士は戦争できなくなりました。植民地主義が全否定されて以降、あらゆる地域紛争は「防衛」の名の下で行なわれています。これは人類史的なパラダイム転換で、それを無視して「戦前の雰囲気に似てきた」との印象論で戦争の恐怖を煽る報道は百害あって一理なしです。

 なぜいま集団的自衛権が問題になるかというと、「中国の大国化」という同じく人類史的な出来事がこの20年で現実のものになったからです。それが周辺諸国を動揺させ、地域の安全保障に大きな変化を起こしました。

 南シナ海の南沙諸島・西沙諸島をめぐる領有権問題で、社会主義国であるベトナムはかつての仇敵であるアメリカに急接近し、1990年代に米軍が撤退したフィリピンでは再駐留を求める声が圧倒的になりました。中国は「歴史問題」で東南アジア諸国との対日共闘を模索しましたが、インドネシアやマレーシア、シンガポールを含め、どこも「いま目の前にある危機」の方が重要でなんの関心も示しません。中国と蜜月だったミャンマーまで、民主化によって中国から距離を置こうとしはじめました。「領土を脅かされている」という不安の前では、歴史的ないきさつや経済的な利害関係などどうでもよくなってしまうのです。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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