ピープル・アナリティクスとは、社員の行動データを収集・分析して職場改善やビジネス成果につなげる手法だ。ある分析会社がこの技術を営業部隊に適用して成績優秀者の行動を探ったところ、3つの明確なパターンが浮かび上がったという。

 

 多くの人は営業という仕事を、サイエンスというよりはアートだと考えている。つまり、その才能がある人とない人がいるというとらえ方だ。だがそのせいで、通常は社内で最も利益を上げる営業部に不確実性が蔓延し、営業部隊の機能を高く維持することが非常に難しくなる。一般的な通念では、販売実績を左右する最大の要因は、営業担当者が顧客と一緒に過ごす時間の長さだと考えられている。だが最近の調査によって、もっと強力な先行指標の存在が明らかになった。それは、営業担当者が“自社内”に持つ人的ネットワークの規模と質である。

 最も優秀な営業担当者に特有の振る舞いを知るには、ピープル・アナリティクス(社員の行動データを収集・分析して職場改善やビジネス成果につなげる技術)が役に立つ。当社ボロメトリクス(VoloMetrix)は最近、B2Bの大手ソフトウェア会社で働く営業部隊を調査し、数千人に及ぶ社員の6四半期にわたるノルマ達成率のデータを分析した。その結果を、ボロメトリクスが考案したピープル・アナリティクスのKPI(重要業績評価指標)に照らして相関を探った。そこには以下のような指標が含まれる。

●顧客またはマネジャーと共に過ごした時間
●当該社員が持つ社内ネットワークの規模と職能横断性
●そのネットワークにおける当該社員の重要度
●経営幹部と過ごした時間

 そして他にも多くの指標を、営業担当者1人ひとりについて匿名で算出した。

 我々はこの調査で2つの段階を想定していた。第1段階では、営業部全体を対象として、いかなる集団にも分類せずKPIを適用する。つまり、中小企業の担当者、販売チャネル担当者、大手企業の担当者を同列に扱う。担当地域もアジア太平洋、欧州、中東、アフリカ、その他あらゆる地域を一律に扱う。

 当社の分析者たちは、この段階では有意義な相関は見られないと想定していた。一口に優秀な営業担当者といっても、たとえばシンプルな低価格品をアジアの中小企業に売る者と、北米で数百万ドル企業にソリューションを売る者は仕事に大きな違いがあるため、共通する行動を特定できなくて当然だと考えていた。そのため第2段階として、社員たちをより類似性のある複数のグル―プに分けて、再度分析する予定だった。

 だが実際のところ、第2段階は不要だった。

 営業品目が何か、営業相手はだれか、あるいは営業担当地域はどこかにかかわらず、その成功は以下の3つの要因と高い相関関係にあることが判明したのだ。

1. 顧客および見込み客と一緒に十分な時間を過ごしている
2. 社内に大規模かつ健全な人的ネットワークを持っている
3. 直属のマネジャーおよび他の経営幹部らと共に時間を過ごし、彼らの注意関心を得ている