いまあるものを活かしきる 
「脚下照顧」の発想

「どうして産廃業者が里山なの?」と言われますが、里山再生は、私にとってごく自然なことでした。工場周辺には誰も使っていない広大な雑木林があり、そこを活かさない手はないと思ったからです。

 “脱・産廃屋”を目指し、地域から認められ、愛される会社になるため、里山再生以外にもさまざまな取り組みを行ってきましたが、私が常に心に刻んでいたのは「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」という言葉です。

 脚下照顧とは、「自分の足下を見つめなさい」という禅の言葉で、我が身、我が心を見つめなさいという意味があります。

 脚下照顧という言葉を胸に刻んでおくと、自分の器、自分の身の丈がわかってきます。自分の周りにあるものにも気づけるようになります。すると、自分の周りにあるものを、上手に活用するアイデアが浮かんでくるのです。

活かして、活かして、活かしきる

 経営には答えがありません。
 会社の規模、社員、あるいは商品など、その会社が持っているものをどう活かすかによって、経営の方法は違います。

いまあるものを「活かして、活かして、活かしきろう」という想いを常に持てば、そのチャンスに巡り合えます。

 チャンスに巡り合うのは、それほど難しいことではありません。アンテナを張りながら、いろいろな媒体を見て、気になったことをインターネットなどを利用して調べます。すると、自分の仕事や自分が持っているものとリンクする部分が見つかります。そこから何らかのチャンスが生まれるはずです。

 そのとき、自己流で突き進んではいけません。
 持っているものの価値を最大限に引き出し、周囲からその価値を認めてもらうには、適切な指針が必要です。

 たとえば、私は里山から集めた落ち葉の使い方がわかりませんでした。
 そういうときは、いろいろな人に話を聞いたり、ネットで検索して調べます。
 わからないからといって、すぐあきらめてしまったら、落ち葉を活かすことはできません。調べた結果、現在はコンポストをつくり、腐葉土にし、森に返しています。

ないものねだりはご法度

 経営者の方が当社の取り組みを知ったとしても、「同じことができる」と言う人はなかなかいないでしょう。

 たとえば、周辺に森がなければ、「森を守る」取り組みはできません。
 でもそこで、「どうせうちにはできない」とあきらめないでください。
「それなら自分たちは何ができるのだろう」と、身近なものに目を向けていただきたいのです。

 先ほど「脚下照顧」という言葉を紹介しましたが、実はこの言葉にはもっと深い意味があります。自分の足下を見つめるとは、我が身、我が心を見つめることに他ならないでしょう。

 要するに、自分のことをよく見極めてから事にあたるというわけです。
「自分たちにはいったい何ができるのだろうか」と考えるとき、この脚下照顧の姿勢が非常に大切です。
 背伸びする必要はありません。

 まずは自分を見つめ直し、自分なりにできることは何かと自問自答すればいいでしょう。一度ぜひ私たちの会社に、遊びにきてください。それも「大人の遠足」の気楽な気分で!


 みなさまのお越しを心からお待ちしています。

<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ! 先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。