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週刊・上杉隆

グルジアも終戦の日も掻き消したマスコミの五輪報道狂騒

上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]
【第41回】 2008年8月21日
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 北京オリンピックもあと数日を残すだけとなった。新疆ウイグルでの暴動、貴州での爆弾テロ、チベット民族の排除など、華やかな競技の裏側には暗い翳が見え隠れする。

 そのオリンピックを「平和の祭典」というらしい。確か、筆者の少年時代までは「アマチュアの祭典」と呼ばれていたように記憶している。プロ選手という理由だけ参加できなかった時代からしてみれば、水泳競技のLR(レーザーレーサー)騒動など隔世の感がある。

 80年代、サマランチIOC会長(当時)とテレビメディアの台頭によって、オリンピックは商業主義路線への転換を果たした。以来、莫大な放映権料がオリンピックを支え、競技の性質そのものを変えてしまっている。

 今回の北京オリンピックでも同様だ。NBCテレビが全放映権料の半額を支払ったため、米国内で人気のあるスポーツ競技の開始時刻は、同国東部時間のゴールデンタイムに揃えられた。

 米国がこのような荒業を発揮したおかげで、「決勝戦は夜」という伝統は崩れた。8つの金メダルを奪取したマイケル・フェルペス選手の出場した水泳競技のように、人気競技の決勝戦は軒並み午前中に行われることになった。

 いつもは欧米に後塵を拝している日本も負けていない。NHKと民放テレビの共同体である「JC」(ジャパンコンソーシアム)と電通の共同戦線もうまくいったようだ。宣伝効果の高い女子マラソンを、当初の競技日程であった金曜日の午前7時半スタートから、日曜日の午前8時半に変更させることに成功したからだ。

 しかし、ビジネス面では勝利を収めた日本だが、肝心の競技とそれを伝えるジャーナリズムにおいては、残念ながら商業主義の前に屈服してしまっている。

グルジア報道よりも
谷の銅メダルを優先

 8月8日以降、日本では、一般新聞と報道番組が消滅している。替わりに「スポーツ新聞」と「スポーツ専門チャンネル」がすべての「報道」を支配するようになった。

 開会式の開かれた8月8日、CNNやBBCなどの欧米の報道機関は、グルジアで勃発した紛争の行方に釘付けとなった。一晩で2000人もの市民が殺された戦闘は、米露の代理戦争の様相を呈していた。必然、北京に来ていたプーチン露首相とブッシュ米大統領の動向に注目が集まる。

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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


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