世界的なマネーフローの変化が始まる
与党大勝でも円安・株高の演出は難しい

 衆院総選挙の結果は、ほぼ事前の予想通り自民・公明の与党が定数の3分の2を上回った。これによって、当面アベノミクスによる経済運営がなされることになるだろう。政策運営が安定するという意味では、それなりの効果は期待できる。

 ただ、足もとのわが国の景気回復の足取りは重い。円安で大手輸出企業の業績は大きく改善しているものの、海外展開が少ない中小企業の景況感の回復は鈍い。大手企業の立地が少ない地方都市の経済は、少子高齢化の影響もあり、回復を実感できない状況が続いている。

 また、わが国を取り巻く世界経済の状況を見ると、米国経済の回復ぶりは鮮明化しているものの、ユーロ圏の景気低迷や中国をはじめとする新興国経済の減速など、不透明な要素が目白押しだ。

 さらに、原油価格の急落を背景にした“逆オイルショック”の影響もあり、世界的なマネーフローに変化が生じている。それに伴い、ヘッジファンドなど大手投資家はリスク量を軽減するリスクオフに走っており、株式や為替などの金融市場の動きが不安定化している。

 そうした状況が続くと、今までのように日銀の“異次元の金融緩和策”によって円安が進み、円安を背景にGPIF(公的年金資金管理運用機構)と日銀の株式購入で株価が上昇するという構図を考えることは、難しくなる。

 今後注目されるのは、安倍政権の成長戦略実施の本気度だ。規制緩和策などを中心とした改革を推進する姿勢を示すことができないと、本当の意味でわが国経済を回復基調に回帰させることは困難だ。

 今回の選挙による国民の審判には、「野党がしっかりしないため、仕方なく自民党を選択せざるを得なかった」という思いがあっただろう。しかし、より広い選択肢を持つ海外投資家などは、これからより厳しい目を安倍政権に向けることになる。安倍政権はそれに耐えられるか、冷静に見据える必要がある。