早いものでもう年末である。毎年、この時期になるとテレビや雑誌などさまざまなメディアが今年の流行の総決算や来年のトレンド予測を発表する。マーケティング屋という職業柄、僕もこれらのトレンド解説や予測記事はチェックするが、「なるほど」と思わせるものは案外少ない。

いまを読み解く重要なキーワード
「非突出系」と「からまる女子」

 そのなかで、発売中の『日経エンタテインメント』(2015年1月号)(以下、日経エンタ)の「キーワードで読み解く2014年」は、なかなか示唆に富む記事だった。同記事では2014年のキーワードとして「からまる女子」「オジ知る系」「非突出系」の3つを挙げている。

「オジ知る系」というのは、テニスとかプロレスとかヘヴィメタルとか、いまのオヤジ世代が若い頃に熱中したスポーツや音楽などが、またまたブームになっているということ。

「非突出系」というのは、とにかく目立たないことがよいという価値観のことで、たとえば、今年大ブレイクした『妖怪ウォッチ』の主人公の少年・ケータはいつもテストで70点を取る。「ドラえもん」の主人公であるのび太がいつも0点を取るのと比べて、この「70点」というのは絶妙な設定で、つまりイマドキの子どもは100点でも0点でもクラスのなかで目立つからダメであり、目立たない70点、言ってみれば平均点を取ることがクラスのなかでいじめの対象にならないために重要らしい。これがいまの子どもたち、そして若者や大人にも蔓延している空気感であるということだ。

 この「非突出系」というのは、いまの時代を読む非常に重要なキーワードだと思うが、僕が注目したのは「からまる女子」である。「からまる女子」というのは、女性同士が絡む物語が今年は受けたということで、その代表例が今年大ヒットした映画『アナと雪の女王』。これは姉妹が絡まる話だ。

 またドラマでは、NHKの朝ドラ『花子とアン』も女子が絡まるお話。さらには、沢尻エリカ主演のフジテレビドラマ『ファーストクラス』。直近のシーズン2では視聴率があまり芳しくなかったが、春に放送されたシーズン1が若い女子を中心に話題を呼び、コアなファンを獲得した。これも、ファッション雑誌やアパレルブランドを舞台に女同士が足を引っ張り合うという、悪女たちが絡まりまくるドラマである。

イマドキのシンデレラ物語は
女同士の世界で完結

 僕もここ数年、女子の恋愛に対する価値観は世間が思っている以上に低下していると指摘し続けているが、「からまる女子」はそうした恋愛価値のデフレ現象と密接に関連している。

「からまる女子」の大ヒット例としてあげられている『アナ雪』にしても、王子との結婚やアナを助ける山男など、男性も多少は絡むが、この物語の本筋はアナとエルサの絡みであり、実は女性のキャリアの物語であり、成長物語である。王子も山男も完全な脇役で、山男に至っては男性である必然性すらない。アナを助けるのが男性でなくても、女性でもいいし、なんならトナカイなどの動物とか岩石とか木の妖精とか、人間である必要もない。すなわち『アナ雪』とは、「男子不要の物語」なのである。男性がいなければ成立しない恋愛物語、シンデレラ物語とはまったく別モノだ。