知らないものは知らないと上司に言おう
そんなことで会社をクビにはならないのだから

観客の女性Bさん 本で紹介されていた『本音で伝える』という話ですが、たとえば30人ぐらいの大きな会議とか、尊敬している人や苦手な人がいる会議だと、発言できないときがあります。そういう恐怖心があるときに、どんな心構えでいると話せるんでしょうか?

佐藤 分かります。自分は何を恐れているのかを考えると、たぶん「間違った発言をしてバカだと思われたくない」というところだと思います。でもバカだと思われたとしても、その1回で会社をクビになることはまずないですよね。

 僕は美大のデザイン学科を卒業して博報堂に入社しました。入社間もないころ、デザインのことなら学生のときから勉強していたので会話を理解できるのですが、マーケティング用語などになると話されている言葉の意味が分からないんですよ。たとえば同期のマーケや営業が、「カニバっちゃうよね」とか「コンセンサスがさ」を連発していて、外国人か宇宙人か?と思った。

(会場・笑い)

佐藤 それで言葉が分からないから、「すみません、僕、分かりません」と言ったら、若手だからかそんなにバカにされることもなかったし、加えて僕は「なんで日本語でも通じる言葉をあえて英語で言うんですか?」と聞いてみたのですが、そしたら上司も「そうだよな、よくないな」とか言ってくれて。だから、特に若いうちはですけれど、社内で知らないことを恐れないという姿勢も大事かもしれません。知らないからこそ言えることってあると思います。

 そこで知らないことでバカにされたとしても、友達として会社にいるわけじゃないので、「別にこの人達にバカだと思われてもいいや」と思っておけばいいんじゃないですか。知ったかぶりするより、そこで正しい知識を得た方が楽ですよ。そんなことで会社をクビになったりはしないし。

(司会者) 可士和さんが一貫しているのは、「目的は何だろう」ということを考えているところですよね。部下と仲良くするのが目的ではないし、先輩にいいと思われることも目的ではない。仕事をまっとうすることが目的ですよね。