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山崎元のマネー経済の歩き方

金融マン、サブプライム問題下の人間模様

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第22回】 2008年3月4日
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 筆者は現在、運用業界の真ん中にいるわけではないが、業界の様子を各方面から耳にする。先日、投資信託からヘッジファンドまで幅広く手がける大手の外資系運用会社の幹部と話した。

 サブプライム問題の発生以来、ヘッジファンドはおしなべて上手くいっていない。特に、日本株を主な投資対象(空売りも含めて)とするヘッジファンドは、多くのヘッジファンドの撤退や縮小に伴い、同類がポジションを解消する際に株価が一段と不利な側に動くこともあり、厳しい状況に置かれているものが多い。彼の会社でも、ビジネスとしてはほとんど死に体のファンドが何本もあるという。

 ヘッジファンドでは、「ハイ・ウオーターマーク方式」といって、過去の最高の基準価額(一口当たりの純資産額)を基準にして、それ以上儲かった場合にいくら(通常は2割くらいが多い)という方法で成功報酬を決めていることが多い。川や池の最高水位を更新できるかどうか、というイメージだ。この方式の場合、顧客の側では、過去最高額を更新しない場合は成功報酬を払わなくてもいいので、心理的に納得性が高い。

 しかし、過去最高の半分以下というようなボロボロの運用成績のヘッジファンドの場合、更新するまでには、上手くいっても何年もかかりそうなイメージになる。ヘッジファンドのビジネス的妙味は成功報酬型の手数料にあるので(売り手側に妙味があるということは、顧客側がカモにされているということでもあるが)、運用会社の側としては、およそ運用に力が入らない状態となる。

 そういった場合にどうなるかというと、本社からの指示は、“理由をつくって不振ファンドを閉鎖し、別のファンドを立ち上げて、そちらに現在の顧客を誘導せよ”という内容らしい。運用成績が悪かった場合は、その後に歯を食いしばって頑張ってくれるはずだという、契約時の顧客の期待は大幅に裏切られることになるのだ。元をたどると、成功報酬で資金を任せる顧客の側がお人よしなのだが、ヘッジファンドの金融マンは、新たな成功報酬の仕組みを再度手に入れようとする。

 しかし、話を聞いた幹部氏によると、さすがに顧客側も簡単にはこうした話に乗ってくれないし、顧客に提案しながらも、あまりの身恥ずかしさに、労働意欲が低下気味だという。

 意欲が低下しても、働く場所があるうちはまだいい。東京の外資系金融機関では、いわゆる投資銀行を含む証券会社で、2007年の夏くらいから人材の採用がストップしている。例によって、運用会社は世の中の変化に対して遅れ気味なのだが、それでも投信販売にかげりが出た2007年末くらいから人材採用がストップし始め、証券・運用共に、採用中止だけでなくリストラ(要は首切り)もほうぼうで始まっている。2007年前半までの、「人材バブル」とも言いたくなるような求人難から、金融マンの人材市場は急速に様変わりした。

 2007年の秋くらいまでなら、バイサイド(運用会社を指す業界用語)には豊富な求人があったが、ついにこれも縮小したので、一部には生活に困る金融マンが出始めている。税金、住宅ローン、子どもの学費などの支払いが心配で、本人が「気づいてみると、サブプライムとは自分のことだった」と自嘲するようなケースが増えている。

 金融の世界は、儲かるビジネスが時代によって変化するし、しかも変化が起こるときのスピードが速い、ということを再認識した、昨今の金融業界事情だ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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