上海を拠点として日本企業の中国進出のお手伝いをさせていただいて、1993年からすでに15年近くになる。この間、日本企業にとっての中国ビジネスは、年々深まり、拡大していった。こうした実績から見る限り、日中間の相互理解は、格段に進展しているはずである。

 しかしながら、日中間のいろいろな側面をみていると引き続きいろいろなすれ違いが感じられるのも確かである。相変わらず、中国の「反日感情」は時として持ち上がり、最近は、日本における「嫌中感情」も高まる傾向にある。15年前にある企業が経験した失敗を、15年後に他の企業が同じく経験することもある。

米国の傘のもと、
世界の現実が見えない日本人

 こうした状況を目の辺りにするにつけ、最近、日本から中国が見えにくい、ひとつの原因に気がついた。それは国家戦略上、米国の傘に守られ、それに安逸さに甘んじてしまった危機感を欠いた日本の社会構造が、日本から世界を見る上での保護膜となってしまい、世界の現実が見えにくくなっているということである。

 日中間を直接に行き来することのない、または少ない人が、日本において中国からの情報を入手するには、一定の媒体を経る必要がある。その媒体のひとつは日本の政府であり、もうひとつは新聞、テレビなどさまざまな新聞媒体である。従って、この媒体が健全で透明であれば、情報はありのままに伝わり、媒体が歪んでいれば歪んで伝わるわけである。

 私は、日本人が日本において取得した中国情報は、歪んだ媒体を通した歪んだ情報であることが多いのではないかと推測する。ビジネスのファーストステップは、いうまでもなく正確な現状認識であるが、歪んだ情報からスタートすれば当然ビジネスの戦略も歪んだものとなってしまう。