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岸博幸のクリエイティブ国富論

クリスマスだからこそ考えるべき「バター不足」の原因

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第284回】 2014年12月26日
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 クリスマスが過ぎました。多くの人がクリスマスケーキを楽しんだと思いますが、同時に、多くのメディアでクリスマスまでのバター不足と、それによる洋菓子店の苦悩が喧伝され続けました。クリスマスだからこそ、改めて今回のバター不足の原因を考えてみるべきではないでしょうか。

バター不足にまつわる二つの違和感

 バター不足の原因としては、昨年の猛暑により乳牛の体力回復が遅れたことや、酪農家の減少により原料となる生乳の生産量が減少したことがよく指摘されています。こうした要因も当然ある程度影響しているのでしょうが、二つの点でどうも違和感を感じます。

 第一に、同じ生乳が原料である牛乳やチーズなどの不足はまったく起きていないことを考えると、どうも納得がいきません。いくら、生乳からはまず鮮度が重要な牛乳やヨーグルトが作られ、残りの生乳を保存してチーズやバターが作られるから、と言われても、今年の生乳の生産量は前年比でわずか2%しか減少していないことを考えると、あまり説得的ではありません。

 第二に、バター不足を受けて「農水省がバターを緊急輸入」と当たり前のように報道されていたことにも違和感を感じざるを得ません。

 5月に7000トン、次いで9月に3000トンのバターが緊急輸入されましたが、国内での供給が需要よりも少ないならば、放っておいても民間企業による輸入が増えるのが市場経済の常です。特に、今年は欧州での生産増加やロシアの需要減により、国際市場ではバターの需給が大幅に緩和して価格も大幅に下落したことを考えるとなおさらです。

 それにも拘らず民間でのバターの輸入は増えず、農水省という政府組織が“緊急輸入”するという事態を、メディアは何の疑問も差し挟まずに報道していましたが、何とも異様な光景と言う他はありません。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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