クリエイティブ・オフィスに求められる要件は主に3つあると石田専務は指摘する。(1)コミュニケーション(2)フレキシビリティ(3)ブランディング、だという。

人と向き合うことで創造性を引き出す仕掛け

 そのうちの社員同士のコミュニケーションについては前述したとおりだが、コミュニケーションの相手は同僚とは限らない。ノンテリを導入している富士ビジネスでは、上司の席も決まっておらず、毎日異なる社員の隣に座る。あるいは"回遊"しながら、用事のある社員の席へ出向く。「Studio F」の中で、石田専務も普段から社内を1日5000歩も歩くという。

「部下を呼びつけて仕事の進捗を聞くより、隣に座って向き合いながら雑談をしつつ、ところで あの案件の進捗は? と聞くほうが、本音を引き出しやすいという利点があります。このときの話は周囲に聞こえてしまいますが、むしろそれを望んでいます。聞くとはなしに聞いている周囲との情報の共有が自然にできるからです。

 また社員の健康状態にいち早く気づくこともできます。顔色が悪ければ直属の上司に『残業が続きで疲れているのではないか』と聞くなど、部下の健康管理もしやすい」(石田専務)

様々な向き合い方ができるミーティングスペース

 ミーティングは特に重要なコミュニケーションの場だ。より創造的な意見を引き出すためにも、殺風景な四角い机を並べた緊張感漂う会議室ではなく、発言しやすい環境で、リラックスして話ができる空間づくりが重要になる。

「Studio F」のミーティングスペースも工夫を凝らした作りになっている。

軽い打ち合わせや気分転換にも使いやすいミーティングスペース

 木のぬくもりを大切にしたロングテーブルのスペースは、カフェでお茶を飲みながら雑談するような空間(上記写真左)。ちょっとした情報交換や雑談などに最適だ。雑談をきっかけに大きなプロジェクトが生まれることは珍しくないだろう。また、モニター付きのテーブルでは、資料を見ながら意見を出し合い、しっかり打ち合わせをするのに適している(同右)。

 モダンなデザインのソファスペースには、話す相手と向き合うために一工夫がされている。

机の高さは2種類。高さに加え奥行にもコミュニケーションをより効率よく図るための工夫が細かく仕掛けられている

 ソファの前に置かれたテーブルは、高いものと低いものがある。高いテーブルは書類を挟んで相手と話しがしやすい高さ、低いテーブルは図面のような大きな紙を広げて俯瞰しながらの打ち合わせなどがしやすい高さになっているのだ。さらに、一般的な応接テーブルよりも奥行が狭い。これは向き合う相手との最適な距離が計算されている。

「私の持論になるのですが、営業部門を例に取れば、以前はスーパーマンが一人いて、先頭を行く彼に組織がついて行くことが多かった。今はスーパーマンの力ではなく、チーム力で物事を突破してくケースが多い。そのチーム力を高めるためにもコミュニケーションをとりやすい環境が必要になっています。『オフィスのカフェ化』などとも言われ、デザイン性に目が行きがちなミーティングスペースですが、実は仲間と向き合い、チームの結束を強めることに役立つ仕掛けにもなっているのです」(石田専務)

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