1%前後と幅は小さかったが
2014年は調整インフレ元年か?

 昨年2014年は、消費税分を除くとピークでも1%前後と幅は小さかったが、明確に物価が上昇し始めた「調整インフレ元年」として、将来振り返られることになるのかもしれない。

 もっとも、大規模な金融緩和を行って、2013年4月の時点で「2年で2%」を目指すと宣言した黒田日銀総裁の立場では、「かもしれない」では困るのかもしれない。

 しかし筆者は、厳密に「2%」にこだわる必要はないと考える。消費者物価の上昇率が2%になるまで金融緩和を止めないと宣言して、将来まで含めた金融緩和を予約し、主として円安を通じて物価を上げることができたことで、ある程度の目的は達成されたと考えて良かろう。「2年で2%が達成できなかったから、日銀の金融政策に対する信頼性が損なわれた」とのみ批難するのは、意地悪すぎる。

 ただし、昨年の消費税率引き上げの影響を見ると、特にデフレかつゼロ金利の下では、金融政策のみで自在にインフレにできるわけではないことを確認しておくことが現実的だろう。資金需要が銀行の貸し出しの伸びにつながるほど十分でないか、あるいは大きな需給ギャップが残ると、政府が財政政策で需要を追加することが必要になる。少なくとも、デフレ脱却までの過程で増税で需要を抑えることは、避けた方がいい。

 財政収支の赤字幅を拡大し、金融緩和で国債を買うとなると、中央銀行による「財政ファイナンス」ではないかとの批難があり得るが、この際「それはその通りだが、それで良い」と整理しておきたい。

 財政ファイナンスの問題点は、よくある言い方では、「通貨の信認が失われること」と「財政規律が失われること」の2つだ。しかし、通貨がいわば「過剰に信認」された状態が円高とデフレだった。

 また、財政支出の額と内容が適切にコントロールされないことは、主として政府と政治に責任のある問題であって、金融政策の問題ではない。それ自体を適切に管理することが、政府の課題だ。