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医療・介護 大転換

サ高住に逆風、併設サービス報酬が減額に
利用者の「囲い込み」は“悪者”か

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第21回】 2015年1月7日
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 介護保険制度がこの4月から大きく方向転換する内情について、前回まで検討してきた。そこで今回は、その中でも厚労省自らが天に唾するような転換策に着目したい。介護サービスと住まいの関係について、すなわち「住まい」の切り札として推奨してきたサービス付き高齢者住宅(サ高住)のことである。

 厚労省が長期的な高齢者ケアの基本として掲げているのが「地域包括ケアシステム」。慣れ親しんだ生活の基盤である自宅周辺の地域で、どんなに重度になっても暮らし続け、最期を迎えましょう、というのが地域包括ケアの考え方。欧米の先進諸国でも共通する認識である。

 その地域包括ケアは5つの要素から成り立ち、最も重要な土台となるのが「住まい」と5年前に厚労省は宣言した。「植木鉢モデル」で植木鉢そのものにあたる(連載の第15回を参照)。住まいをベースに、生活支援や介護、医療、予防が柱となる。住まいの具体的な施策はサ高住が主役。だから、サ高住の役割を変えるような政策は高齢者ケアの土台を揺るがしかねない。

「訪問介護」併設型のサ高住に打撃
事業者の報酬が10%減額へ

 これまでの審議経過を知らされた事業者の中には、「あれほどサ高住を大宣伝したのに梯子を外すのか」「自宅と集合住宅の違いを強調しすぎる。現場知らずの偏見に基づく」「要介護者や事業者に対して自宅か施設の2類型しか選択させない過去の発想」という批判が出ている。

 介護サービスの内容を決めるのは厚労省の社会保障審議会介護給付費分科会である。1月9日には厚労省から詳細な提案が成され、1月中には同分科会の了承を得るだろう。厚労省は「半年以上の度重なる審議を踏まえ尊重したたうえでの提案」とし、審議会の決定となる。

 争点となっているのは、訪問系介護サービスの利用者が集合住宅の居住者である場合に事業者が得る報酬を減額する点だ。

 集合住宅とは、養護老人ホームや軽費老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サ高住を指すが、数量が多いのはサ高住で、影響が最も大きい。

 その集合住宅が(1)介護サービス事業所と同一建物内、あるいは隣接敷地内にある場合は報酬を10%減とする (2)同一建物や隣接でなくても、集合住宅に1ヵ月当たり20人以上の利用者がいればやはり報酬を10%減とする―――というものだ。

 訪問系サービスとは、訪問介護のほか訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、それに定期巡回随時対応訪問介護看護(24時間訪問)である。こうした事業所がサ高住の入居者にサービスに出向くと報酬が減らされてしまう。サ高住の建物の1階に事業所を構え、上階の入居者がそのサービスを利用しているケースは多く、事業者には大打撃となる。

 基本報酬からの減額は、いわば罰則。ペナルティを課されると受け止められる。はっきりいえば「良くないこと」「勧められないこと」である。

 つまり、サ高住と同じ建物で訪問介護の事業所を設けるのは、正当な事業でないと言わんばかりだ。これに対して厚労省は「戸建て住宅に一軒一軒訪問するのと比べ集合住宅は効率がいいので、報酬に差をつけた」と説明している。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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