オペレーターや通信インフラが
“オンデマンド”の高コスト要因に

 地域のバスを、タクシー車両やワゴン車でのデマンド交通に切り替える動きは全国各地にある。効率化で劇的に安くできるイメージがあるが、現実には「コミュニティバスに比べて2~3倍の輸送コストがかかる」(国土交通省中部運輸局「続・デマンド型交通の手引き」より)。

 なぜか? コミュニティバスなら、路線ごとにバス1台と運転手を用意するだけでいい。ところがデマンド交通では、次々にかかってくる電話予約に対応して便を設定するオペレーターと、それを運転手に伝える通信インフラ、さらに増便に対応する予備車両と運転手も必要になる。それが意外な高コストにつながるのだ。

 新太田タクシーグループは、タクシー会社ならではの工夫でコストを抑えている。「夜勤の運転手さんが朝上がると、その車は夜まで空いているわけです。そこで、デマンド専門の運転手さんを時給で雇い、その車に乗ってもらうことにしました」(澤田幸博社長)。

 中型タクシーで運行するため、1便の予約が5人以上になると、2台目が必要になる。しかし同社ではデジタル無線ですべての車両に便設定が送信できるため、増便の際には空いているタクシー運転手に応援してもらうことで、デマンド用車両は最小限にしか用意していない。

 配車ソフトも、従来のものを改良して対応力を強化した。最初はオペレーターが手入力で便を設定していたが、利用者の大半が高齢者で電話のやりとりが要領を得ないことも多く、デマンド交通の路線数が増えるにつれて作業負荷も大きくなっていた。だがいまや、電話片手にマウスで頭のひらがなを選択するだけで停留所名や利用者名の候補が一覧表示され、それらを確定していくだけで便が自動設定される。

 2市1町で合計10路線をカバーする今でも、デマンド交通の配車は午前中2名、午後1名のオペレーターだけで、タクシーと同じ配車室でまかなっている。オペレーターを増やさず、配車システムを手作りし、予備車両も設けない。それが新太田タクシーグループならではの節約の工夫だ。

 可児市のデマンド交通は相乗り率1.8人/回、運行経費878円/人。運賃は300円だから大赤字には違いないが、他の自治体と比べれば飛びぬけて優秀な成績だ。