2006年1月の“ライブドアショック”以降、全面的に下がりっ放しだった新興市場の株価。米国のサブプライム問題に端を発した株価下落も加わって、今年に入って新興市場に上場した9社のうち、3社の初値が公募価格割れ(3月12日現在)と惨憺たる状況が続いている。

 「新興市場全体が、不正会計をしているかもしれない会社に合わせて株価形成された結果」と証券関係者は頭を抱えるが、そもそも新興市場は流動性の低さなどから、機関投資家が投資対象外としていることが多い。結果として“プロの目”による適正な企業価値評価がされず、将来有望な優良企業でも低い株価のまま放置されてきた。

 その状況に“商機”を見出したのが東京海上日動火災保険だ。昨秋から企画を練り始め、新興市場などの上場企業に投資するPIPEs(プライベート・インベストメンツ・イン・パブリック・エクイティーズ)型投資ユニットを昨年12月に立ち上げた。

 年間の投資金額は30億~50億円を見込み、今年2月には第1号案件として、産業廃棄物処理ビジネスを行なうタケエイ(東証マザーズ上場)への約20億円の投資を決めた。

 東京海上日動の方針は明快だ。「東証一部への昇格を狙い、取引先や人材の紹介、リスクマネジメントでも協力する。2~3年の保有で、年率15%の収益率を目指すが、さらなる成長が期待できる企業の株は保有を続けることもある」(平山寧・東京海上日動火災金融開発部課長代理)。

 出資を受け入れる側にとっては、資金調達以上のメリットも少なくない。東京海上日動は持株比率約10%で、第3位の株主となって大株主の欄に名を連ねてくれる。いわばプロ中のプロの“お墨付き”を掲げたようなものだ。株価へのインパクトはもちろん、銀行借り入れなどの与信面、採用などの人材面でも大きな後ろ楯となる。しかも現在、保険会社の出資は10%以下に規制されているため、これ以上株を買い進められ、乗っ取られる懸念もない。

 東京海上日動は今後、第二段、第三段と投資を続けていく構え。機関投資家など、プロの投資家に追随する動きが広がれば、不信感を持ち新興市場から離れていった個人投資家による優良銘柄の物色も再開する可能性は大。低迷を続ける新興市場底入れのカンフル剤となるか、要注目である。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)