橘玲の世界投資見聞録 2015年1月15日

2015年はどんな年になるのか?
イスラム、欧州、そして中国の変動が日本に与える影響とは?
[橘玲の世界投資見聞録]

  今年はどんな年になるのだろうか

 2015年の年明け早々、特殊部隊並みに武装したテロリストが出版社に押し入り銃を乱射するという前代未聞の事件がパリで起きた。すでに多くの報道がなされているが、犯人がイスラム原理主義の過激派組織アルカーイダやISIS(イスラム国)と関係があることは間違いない。

 日本人がオウム真理教事件で体験したように、イスラムに限らずユダヤ教やキリスト教、仏教、ヒンドゥー教などすべての宗教がカルトを生み出す必然を内包している。これは「神」という幻想が、(国家や民族と同様に)ひとびとを正義の絶対的な高みに連れ去るちからを持っているからだ。そのなかでもとりわけイスラムのカルト(ジハード唱道主義)は歴史的、文化的、社会的、政治的、経済的な理由からヨーロッパの若いムスリム男性のあいだに強い影響力を持っており、残念ながら、類似の事件は今後も起こり得ると考えるほかないだろう。

 日本もそうだが、先進国の「右傾化」は高齢化にともなう生活保守のことで、ひとびとの関心は戦争や領土の拡大ではなく、自分や家族の安全と財産の保全、および社会保障などの既得権の確保にある。無差別テロがどこでも起こり得ることを目の当たりにした今回の事件が(保守化した)ヨーロッパ社会に与える影響は甚大で、今後、移民の排斥を求める政治勢力が大きく支持を伸ばすことは間違いないだろう。

 反イスラムの風潮が社会に蔓延すれば、ムスリムの貧困層からカルトに走る若者が増えるだけから、これは典型的な「敗者のゲーム」だが、政治家は選挙に勝たなくてはならないのだから、わかっていてもこのゲームに参加するほかないのだ。

原油価格暴落という"異常事態"

 昨年後半から原油価格の下落という“異常事態”が起きている。2008年7月に1バレル=147.27ドルの史上最高値を記録した原油先物価格(WTI原油価格)は昨年9月から下がりはじめ、年明けには1バレル=50ドルを割り込み往時の3分の1になってしまった。アメリカを中心とする「シェール革命」で供給過剰になったからだと説明されているが、鉄鉱石や非鉄金属の価格も下落しているのを見れば、資源への需要そのものが落ち込んでいることは間違いない。

 前世紀末から始まった中国の市場経済への参加は、人口13億の巨大な国が年率10%を超える経済成長を20年以上にわたって続けるという“人類史的な”事件で、東アジアだけでなく世界の風景を一変させてしまった。その中国経済が減速を始めれば、やはり世界の風景は大きく変わらざるを得ないだろう。

 2008年のリーマンショック以降、中国は大規模な公共投資によって全国に鬼城(ゴーストタウン)の山を築いたが、地方政府の財政悪化によってこの異常な不動産開発ブームはほぼ終った。中国の巨大なバブルがロシアやブラジルなど資源国の株価の高騰や香港・シンガポール、東南アジア諸国の不動産価格の上昇を引き起こしたのだとすれば、今後、さまざまなところでバックラッシュ(反動)が起きるのは避けられない。だが昨年の今頃、原油価格の50ドル割れを誰も予想できなかったように、その余波がどこに波及するかは未知の世界だ。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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